合格者の声

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2022/07/21

【経営承継アドバイザー】株式会社TRAYD INNOVATION代表 長田 政也さん 事業承継の支援を通して、地方の仕事を守り、地元を守る。

株式会社TRAYD INNOVATION代表
長田 政也さん
2022年1月認定

事業承継の支援を通して、地方の仕事を守り、地元を守る。

まずは現在のお仕事についてお聞かせください。

中小企業の円滑な事業承継を支援する、株式会社TRAYD INNOVATIONの代表を務めています。2021年に沖縄で創業をして、現在は福岡にも拠点を広げ、九州エリア全域の中小企業様を支援させていただいています。

主に事業引き継ぎの相談やプレ承継、PMI*における実務支援を行っています。

*PMI:当初計画したM&Aの統合効果を最大化させるための統合プロセスとマネジメントのこと

なぜ、沖縄で創業されたのですか?

まず、沖縄の事業承継問題が非常に重たく感じたためです。また、一緒に創業したCEOの玉城が沖縄出身の起業家だったことも要因です。市場ニーズが大きく、また外注して経営を支援してもらうことが一般化していない地域だと感じた沖縄県で、事業承継の支援モデルを成立させることができれば、日本全国ひいてはアジアにもサービスを展開していけると考え、沖縄を選んで勝負をすることにしました。

全国的に社長の高齢化が進んでいますが、沖縄でも同じでしょうか?

全国のデータで見ても沖縄の高齢化はかなり進んでいると思います。実際にご相談にお問い合わせいただく方も70代、80代の社長が多いです。先日、沖縄返還50周年記念式典がありましたが、その当時に創業した社長が未だに最前線でご活躍されていらっしゃる地域です。沖縄を再建させてきた沖縄の大先輩たちは大変エネルギッシュです。そのお子様世代もいつの間にか50代~60代と高齢化してきている状況ですが、承継されていない企業がまだまだいらっしゃる印象です。

長田さんから見て、事業承継が進まない原因はなんだと感じますか?

大きくわけると、原因は3つあると思っています。

1つめは、プレ承継期において譲る側にニーズが顕在化していないことです。あまり適切な表現が見つからないのですが、「まだ大丈夫、まだ自分は頑張れる」と思っている方が多く、大切にしてきた我が子のような会社を誰かに引き継ぐということを現実に受け止めて対策を自主的に始めることが難しい様子です。顧問税理士たちから事業承継の案内を積極的にするわけにもいかず、「自分が引退する」ということを受け止めて向き合う機会が足りないことが問題だと思います。

2つめは、前職のコンサルタント時代の傾向も踏まえると、社長と引き継ぐ方との間で、経営の共通言語が少なすぎることが問題だと感じています。

経営者は、どこからどこまで伝えていいものなのか分かっていないことがほとんどです。

伝えてきたつもりでも引き継ぐ方が理解できていないということが、事業承継の現場で起こっているのが現状です。

経営における「ヒト・モノ・カネ」じゃないですが、「人、仕組み、繋がり」の共通言語やノウハウを活用していかないと、お互いに不要なストレスがかかってしまい、事業承継がスムーズに進まないことが多いです。

3つめは、そもそも引き継ぎたいと思われるような、魅力的な会社になっていないことです。

借入が大きいことや、顧客や売上が社長依存の状態であったりすると、社長自身もそのことを理解しているので後継者に引き継ぐより、清算することを考えてしまいます。また、後継者候補がいたとしても、シュリンク産業やビジネスモデルの不安定さによって、引き継ぐ魅力を感じなければ承継してもらえません。引き継ぐためには、引き継ぎたいと思ってもらえるような状態まで事業そのものを磨き上げることが重要ですが、それを教えてくれるパートナーは世の中に存在しないのです。

事業承継の会社を立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。

私は熊本県球磨郡湯前町という小さな町の出身で、父方の実家はもうすぐ創業120年を迎える会社です。今は伯父が代表を務めています。家業というよりは「いとこの実家」という視点で、傍から見ていて「この会社は今後どうするのかな…」と見ながら育っていました。私が幼かったころからこの30年間でも色々と段階を経て伯父夫婦が事業転換を進めていらっしゃいました。また父も若いうちから個人事業主として働いており、苦労している姿を長くみて高校を卒業するまで育ててもらいました。

その後、リンクアンドモチベーションというHR人事領域のコンサルティングファームへ入社し、九州支社の立ち上げの際にコンサルタントとして中小企業の経営のご支援を経験していくなかで、地方の中小企業のPMIや承継のタイミングに関わることが複数ありました。当時はよく揉め事の間に入ってサポートをさせていただきました。その中で悩ましかったのが「感情」のすれ違いでした。いつか承継しなければいけないとわかっているものの、どのように世代交代すれば良いかわからない経営者。一生懸命頑張っているのに認めてもらえなかったり、権限移譲してもらえずにヤキモキしている後継者。双方の気持ちを聞きながら長期間「間の問題」の解決のために立ち居振る舞いました。

生まれ育ちはもちろん、コンサルタント経験の中で経営者の気持ちに触れる機会が多かったからこそ、いつか事業承継において支援できるサービスを作りたいと思っていました。

もう一つは、地元に後継者側の友人がたくさんいるのですが、年齢的にも30代を超え、みんな承継について悩みはじめています。加えて、2020年に球磨川が氾濫しまして、その影響で友人の会社が廃業を選択し、「仕事がない」という理由で3世代まとめて地域を去っていく相談にのったりしていました(もちろん、引っ越しの要因はその他にもありましたが)。

実際に水害直後に私も単身で現地に入って支援活動をしていたのですが、水害直後の現地を見て「これからこの地域はどうなるんだろう」と思ったのを覚えています。

地方から会社・仕事がなくなるということは人口が流出するということであり、このままだと私の実家・地元、そこを守っている友人達がどんどん去っていくかもしれません。そうすると私の知っている「地元」は無くなってしまうのだと実感しました。誰かがその状況を食い止めなくてはならないと思い、私自身は環境的にも勝負ができるちょうどよいタイミングでしたし、大手コンサルティングファームやM&A仲介会社ができない支援モデルで世の中を良くしたいと考えて創業しました。

事業承継コンサルティングをするうえで大切にしていることはなんですか?

もちろん、社長の望む未来を引き出し、実現まで導くことです。

売却を目標とする場合は、売る前に企業価値を上げていくことを支援しています。きちんと売れるまで磨き上げた上で、売り手のためのFAとしてご支援していくようなモデルを今構築しています。MBOや親族に譲渡する場合は企業価値を下げることも重要です。

事業承継は経営者にとって人生最大のビックイベントです。そのため、妥協はせず成果に拘る支援方法に拘っています。

実際に「今のままでは値が付かない」会社も多く存在します。私たちがご相談にのっていると「売れないと言われて相手にしてもらえなかった」という方もいらっしゃいました。

今売れなくても、今後売れるようにするポイントは3つあります。

「BSを厚くする」「独自のビジネスモデルを磨く」「社長がいなくても回る組織をつくる」という3つです。

売上や顧客、そして属人化した領域の業務を担当している重要な従業員が、社長が代わった瞬間に離れていくとしたら、会社が回らなくなってしまいます。

そういう状況だと、引き継ぎ手が見つかりません。

私たちが介入することで事業に磨きがかかり、後継者が安心して引き継げる状態を作ることを心がけています。

「経営承継アドバイザー講座」受講の決め手は何でしょうか?

一番は「お客様を安心させたい」という想いでした。

私自身は、経営コンサルタントという見られ方ではなく、事業承継の難しさや葛藤、悩みをきちんと理解していて、その解決ソリューションを持っているプロフェッショナルだと見てもらいたいなと思っていました。知識は自社でも確立していましたが、専門的な資格として体系立てているものがあるのであれば、学びたいなと思い、探していたときに経営承継アドバイザーを見つけて、すぐに申し込みました。

経営承継アドバイザー講座を受講してみていかがでしたか?

期待通りの内容でした!

情報だけがまとまっているのではなく、支援側として“あるある”な事例がケースとして活用されていましたどのように考えアプローチしていくかを学べたので良かったです。またオンデマンドでいつでも見られるのも助かりました。ちょうど年末年始で会社が活動していない期間にまとめて勉強することができて、とても充実した時間になりました。

経営承継編については、温かみのある事例が大変多かったです。お客様や金融機関への説明にも私たちの立場の説明がしやすいので、よく活用させていただいています。

制度理解編に関してはいかがでしたか?

これまで税理士さんとの連携の中でもたくさん勉強してきましたが、もう一度学ぶことで復習になりました。1回学んで知っている内容でも再度学び直すことで思い出して、お客様に案内をし直すこともありました。教材の図解もわかりやすくて、お客様にそのまま見せて説明するなど活用させていただいています。

これから経営承継アドバイザー講座を受講される方へメッセージをお願いします。

一言でいうと、取って損のない資格だと思います。

経営の承継をしていく、またはその場面に携わるというのは結構重たいことだと思いますが、どのようにアプローチをして、どのような支援をすればお客様が救われるのかを知っていれば、漠然とした恐怖は減っていくと思います。

事業承継の場面でどのようなことが起こるのか、どのようなことを学んでおけば力になれるのかということを体験してもらえる内容なので、支援者の方にはぜひ学んでほしいと思います。

最後に、長田さんの今後の抱負を教えてください。

私は「リノベーターが活躍する世の中を作る」ことをビジョンに掲げています。リノベーターとは、経営承継アドバイザーのように、外部から支援して企業をリノベーションする役割を担う人材のことです。このリノベーターが日本中に溢れて、様々な想いや伝統、技術を継承していき、さらに活躍していける社会を作ることに勤しみたいと思っています。

今後は公的機関とも協力をして、全国の後継者不在で黒字である中小零細企業、60万社のみなさんの力になって、地方の雇用を守り、みなさんの地元が今後も残っていける、そんな未来をつくっていきたいと思っています。