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2022/08/08

【経営承継アドバイザー】tsutaeru代表 尾田 美和子さん 伝統工芸ゆえの“数字だけじゃない課題”まで網羅する「経営承継アドバイザー」

tsutaeru 代表
一般社団法人 西陣経済研究所 代表理事
尾田 美和子さん
2022年2月認定

伝統工芸ゆえの“数字だけじゃない課題”まで網羅する「経営承継アドバイザー」

まずは現在のお仕事についてお聞かせください。

伝統工芸品の素晴らしさと、新しいものづくりを伝えることを目的に設立した「tsutaeru(ツタエル)」と、一般社団法人 西陣経済研究所の代表を務めています。活動内容としては、①西陣織の研究調査、②西陣織のプロデュース事業、③コンサルティング事業、この3つを柱に事業を展開しています。

「tsutaeru」を設立した背景を教えてください。

私は大学院時代に「西陣織」について研究調査をしていましたが、和装需要が激減した現代では新しい販路を見つけないと生き残りが厳しい状況で、どうやって新しい取引先を見つければよいのかと悩んでいる織元さんが多くいらっしゃいました。一方で、私の地元である香川県はものづくりが盛んな地ですが、原材料となる素材などが少ないところでもあり、他産地の良い素材やブランドと結びつきたいと思っている方が非常に多くいらっしゃいました。そんな中で研究者である私が西陣織の生地を紹介したところ、「是非西陣織の生地を使ってみたい」とたくさんのお声がけをいただきました。

そこで、研究調査の一貫として私が適切な企業をつなぎ合わせて、なにか新しい商品を生み出し、その価値や職人さんの想いを伝えようと思い「tsutaeru(ツタエル)」という事業を始めました。

 

その次に「西陣経済研究所」を設立するのですが、こちらは経営承継アドバイザーと同じような趣旨で、やはり西陣を含めた伝統工芸産地では後継者の育成問題が大きな課題となっています。また実際の職人だけでなく下請け関連産業の後継者問題も深刻です。

金融機関の方のアプローチも必要ですが、様々な現場に研究調査に行く研究者がお話を伺うことで、職人さんとの信頼関係を構築しやすくなると思います。私自身が研究調査の一貫でお話をお伺いしていくなかで「後継者どうしよう」とか「どうやって技術を承継していこう」という悩みを聞くことが多かったので、これらの課題を産地の皆さんと共に解決していきたいと思い、法人を立ち上げました。

西陣織に興味を持ったきっかけは何だったのですか?

生まれは兵庫県なのですが祖母が呉服屋を営んでいましたので、その影響で幼い頃から呉服について触れる機会も多く、祖母に連れられて西陣の産地に行ったこともありました。そのご縁で大学生時代に西陣を題材とした論文を書いて受賞することもできました。そのデータを活かして大学院でも研究を行っていたのですが、あるときに教授のお誘いをうけ香川県のものづくりの産地を研究することになりました。

「tsutaeru」のプロデュース事業では、どのような商品を開発しているのですか?

最初に企画開発したのが「西陣織のファーストシューズ」でした。
西陣織は1000年以上の歴史を持つ京都の伝統工芸品で「ハレの日」「縁起物」「人生の節目」に使われてきた織物です。西陣織のファーストシューズは、すべて工程を日本の職人の手で作るので日本のものづくり職人の「技」と「感性」と「縁起」を込めたベビーシューズです。

ブータン王国の王子にも贈呈しまして、そのきっかけは職人さんに自分の仕事に誇りと自信を持ってほしいという想いでした。職人さんは高齢の方が多いのですが、絹糸が光に弱いこともあって工房には窓がなく、外からは何をしているかよくわからないのです。そういう理由で、お孫さんに「時代遅れ」とか「何が楽しくてこんなことしているの」と言われて悲しんでいる職人さんがいらっしゃったので、「これまでの集大成を作ろう!」と領事館に申し出をして職人さんと一緒に作り上げました。ブータンの王子にシューズを贈呈したという事実も重要ですが、西陣織を贈呈する意義や受け取った方が喜んでくださったこと、そして“こんなことを成し遂げた”と見える形で履歴をつくることができたのでよかったと思います。

職人さんと共同でものづくりをしていく際に、気をつけていることは何ですか?

いくら良いものを作っても、連携ができていないとモノは売れていきません。そのために私も一緒に現場に入って作業をして、どのように伝えたらより美しいものができるかを常に考えてものづくりよりも信頼関係の構築に力を注ぎました。人件費が多くかかっているように思われるかもしれませんが、現場に張り付いているからこそ突発的な問題もすぐに解決できますし、長い目で見ると商品として良いものができて、素早い問題解決ができます。結果的にコスト削減にもつながります。

販売も同じで、ただ「売ってください」ではなくて、私自身も現場に立ちお客様の質問にどう答えればよいか、どのように商品をPRすればよいかマニュアルを作って販売員の方に渡してレクチャーをしたりします。

製造、販売、消費者に至るまで、どのように関係性を構築しているかでモノの売れ行き、出来上がりは大きく変わってきますので、その点を特に気をつけています。

「経営承継アドバイザー講座」受講の決め手は何でしょうか?

行政書士の勉強をしようと思いTACさんにメールアドレスを登録していたのですが、その際に案内を送っていただき「経営承継アドバイザー」のことを知りました。

西陣を研究していると、企業経営や技術承継の“数字だけじゃない部分”を痛感することが多くあります。それらを解決することで今後の西陣の役に立てると考えて、どのように発表すれば伝わるだろうかと悩んでいたときに、まさに“そのこと”についてわかりやすく解説してくれたのが「経営承継アドバイザー」講座案内でした。要は専門家に委ねるまでにどのようなことを企業の財産として理解してあげていくか、という部分ですね。まさに私がやりたかったこと、そして自分の中で解決したかったことだったので、受けてみようとすぐに申し込みをしました。

経営承継アドバイザー講座を受講してみていかがでしたか?

私は大山先生の「経営承継編」に注力をして勉強しました。テキストは何度も読み返しましたね。

私自身コンサルティングをするなかで、企業さんにお伝えする際どのような言葉で伝えればわかりやすいかを考え、そのための資料を作るところに労力が割かれることが多かったのですが、今回の経営承継アドバイザーのテキストは雛形や事例が多く、それをもとにお話をすると伝わりやすいのでよく活用させてもらっています。

また、経営者の方は身近なトラブルや細かなお金の悩みを、顧問弁護士や税理士といった専門家には話さないことが多いと感じています。そこで、経営者と頻繁に顔を合わせている私が専門家へバトンタッチできる状況を作り、そうした悩みまで伝えていくべきだと思いました。そういった意味でこの資格は、経営者の方の話を集約・整理するために必要な資格だと思います。

経営承継アドバイザーをどのような方にオススメしたいですか。

西陣、香川のものづくりもそうなのですが、地域に根付いている方やコンサルタントの方は一人でも多くこの「経営承継アドバイザー」にチャレンジしたら良いと思っています。身近で何かを感じている人ほど言葉に発言力がありますので、そのような方が資格を取得して、地元企業に対してアプローチしていくことが理想です。

私自身は、もともと研究者なのでコンサルタント業は依頼があればお引き受けさせていただいていますが、研究をしてきた者だからこそ気づくこと、経営をしてきた者だからこそ理解できることがあると思っています。経営者がふとした悩みを相談できるような人間で有りたいですし、そういう人たちが増えていくことで中小企業の経営者もいろんな話ができて円滑な事業継承、技術の承継につながっていくと思います。

これから経営承継アドバイザーを受講される方へメッセージをお願いします。

やはり「聴く」ことはとても大事で、相手にもこちらの想いが伝わると思っています。

伝え方も重要なのですが、どうやって聴いてくれるかというところで相手の気持ちが開くかどうかが決まります。いろいろな会話からその人の課題を見つける前に、まずは「聴く」こと。そのなかでどうすれば興味を持ってもらえるかなと考え、経営者への想いを強くしていくほど心を開いてくれることが多かったと思います。そういう意識を持って、本資格を学ばれると良いのかなと思います。