ごえんをつなぐコラム

【年金】年金は増えるのに、「物価ほど増えない」のはなぜか― 2026年6月支給分から変わる年金額とマクロ経済スライド

DATE26.05.14

こんにちは。ファイナンシャルプランナーの横川由理です。今回のテーマは、2026年4月分(6月15日支払分)から改定される年金額についてです。

年金額改定のルール

最近は、スーパーでの買い物や外食、電気代など、「物価が上がった」と感じる場面が増えています。年金制度は、このような物価の動きと深く関係しており、具体的には消費者物価指数や賃金の変動に応じて、毎年、 引き上げ・引き下げが行われる仕組みになっています。

「物価が上がれば年金も増える」と聞くと、一見安心できるようにも思えます。しかし実際には、物価上昇率よりも年金額の増加率は1.9%〜2.0%(2026年度の率)に抑えられています。

年金額を決める「2つの指標」と「1つのブレーキ」

なぜ、物価の変動と比べて年金額が抑えられるのかというと、「マクロ経済スライド」 が存在するからです。マクロ経済スライドとは、少子高齢化によって現役世代が減少する中で、将来の年金制度を維持するために導入された仕組みです。

物価上がり続けた場合、その上昇に合わせて年金額を増やし続ければ、現役世代や年金財政の負担が大きくなってしまいます。そのため、物価や賃金の上昇よりも、年金額の伸びを抑える調整が行われているのです。

なお、2026年度の年金額改定は、物価変動率と名目手取り賃金の変動率の「2つの指標」とマクロ経済スライドによる調整率という「ブレーキ」によって成り立っています。

(2026年度の率)
• 物価の変動率:3.2%
• 名目手取り賃金の変動率:2.1%
• マクロ経済スライドによる調整率:▲0.2%

年金額は、物価変動率や名目手取り賃金変動率に応じて、毎年度改定を行います。物価変動率が名目手取り賃金の変動率を上回っている場合、現役世代の負担に応じて賃金変動率を採用する決まりになっています。そのため、2026年度は低い方である名目手取り賃金の変動率「2.1%」を基準に計算します。

その結果、国民年金は前年比1.9%の引き上げ、厚生年金保険(報酬比例部分)は、前年比2.0%となりました。厚生年金保険のマクロ経済スライドによる調整率は、国民年金とは改定ルールが一部異なるため、最終的な変動率にも差が生じています。

この差は、現役世代と将来世代の給付水準を確保すること、そして厚生年金保険の受給者に不利になり過ぎないように配慮しているからです。なお、40年間保険料を支払った場合の2026年度における老齢基礎年金の金額は、847,300円となっています。

このように年金額は、物価や賃金の動きをもとに決まりますが、マクロ経済スライドによる調整が加わることで、年金額の伸びが抑えられるようになっています。つまり、物価が上がった場合でも、年金額の増え方は物価上昇に完全には追いつかないわけです。

とはいっても、公的年金は、物価の上昇から私たちの生活を一定程度守るために自動的な調整機能を持っているといえるでしょう。

年金制度は複雑に見えますが、「なぜそうなるのか」という背景を知ることで、ニュースの見え方も変わってきます。仕組みを知ることで、将来への備えについても過度に不安を感じることなく、正しく考えることができるでしょう。

 

ファイナンシャルプランナー
横川 由理

 

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