ごえんをつなぐコラム

四格を育む⑩

地域金融機関の原点~映画「素晴らしき哉、人生!(It’s a Wonderful Life)」より

DATE18.11.12

先日、当協会の認定教育機関であるTAC株式会社の九州地区担当の國料徹氏が、金融人材・企業経営アドバイザー検定試験や認定制度のご説明に九州北部信用金庫協会の篠原専務理事に面談をいただいたときのこと。ひと通りお話をお聞きいただいたあと、篠原専務理事より、「信用金庫の原点がこの映画の中にあるのです。是非ご覧下さい。」と映画のDVDが差し出されたそうだ。

その映画は、「素晴らしき哉、人生!」(1946年アメリカ映画:It’s a Wonderful Life)。

アメリカ映画協会(AFI)の「感動の映画ベスト100」で1位にランクされている名作とのことで、早速、私自身も鑑賞させていただき、感動に浸らせていただいた。

映画自体は白黒、物語は1919年から始まる。今から約100年前のアメリカの小さな町が舞台となって展開し、1945年のクリスマスイブに主人公ジョージの身に起こる出来事でこの映画のクライマックスを迎える。ジョージは生きることの素晴らしさをこの映画を通じて私たちに伝えてくれるのだが、私自身が何よりも感動を覚えるのは、主人公が彼の父の家業である建築貸付組合(Building and Loan Association:後の“貯蓄貸付組合”となる地域金融機関)を継承し数々の重大な苦難に遭遇するのだが、それを乗り越えさせてくれたものは、地域の人々にあったとするところだ。

夢や希望を感じるというアメリカ映画さながらの展開で心地良さを感じさせてくれるだけではなく、特に地域金融機関に勤務するあるいは勤務した経験のある者からすると、地域の人々の存在が如何にありがたいものか、ということを知らしめてくれる名作だ。この映画のエンディングの場面では、天使の言葉で「ジョージよ、覚えておけ。友ある者は決して失敗しない。(Dear George, Remember no man is a failure who has friends.)」とある。

時に地域金融機関というものは、地域の人々に金融と言う機能を通じて様々なサービスを提供する主体ではあるのだが、それも地域の人々の支えがあるからこそ、そのような存在になり得ているのだと、あらためてこの映画は思い起こさせてくれる。

今から72年も前に制作された白黒映画ではあるが、テーマは決して色褪せてはいない。むしろこのような時代だからこそ、この映画を鑑賞することで、あらためて金融のあるべき姿ひいては人生のあるべき姿というものを考えてみたいと思う。

篠原専務理事が、何故この映画を「信用金庫の原点」と表現されたのか、最初は正直理解に苦しんだ。しかし、この映画を見終わって、おっしゃられた意味をよく理解させていただくことができた。時代や国が違っても、人間がおこなう金融という事業においては、「人間の心が通い合う社会においてこそ機能するのだ。」という原点に戻ることをこの映画は示唆してくれているのだと。

 

一般社団法人日本金融人材育成協会理事

飯田 勝之

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