【企業経営】経験価値マーケティング
DATE25.06.02
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。
商品のコモディティ化が進む中で商品開発やマーケティングで意識したい考え方に経験価値があります。今回は経験価値マーケティングについて取り上げます。
経験価値マーケティングとは
経験価値マーケティングは、コロンビア・ビジネス・スクールのシュミット教授が提唱したマーケティングの考え方です。経験価値とは、製品やサービスを利用することで得られる感動や喜び、満足感といった心理的・感覚的価値を指します。
かつて消費者は、自分のニーズを充足させるために消費活動を行っているとされてきました。しかし、経験価値マーケティングでは、自分たちの感覚をときめかせて、感情を揺り動かし、心を刺激するような経験価値が、消費活動を左右すると考えました。
経験価値の5つの視点
経験価値は次の5つに分かれ、それぞれに合ったマーケティング戦略を考えることが大切です。
① SENSE(感覚的経験価値)
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感に訴えかける
② FEEL(情緒的経験価値)
企業やブランドに愛着を抱いたり、感情移入したりできるような訴えかけをする
③ THINK(創造的・認知的経験価値)
顧客の知性や好奇心に訴えかける
④ ACT(肉体的経験価値)
食生活や時間活用など新たなライフスタイルを提案し、行動を誘発する
⑤ RELATE(準拠集団や文化との関連付け)
顧客が属したいと考えるグループ・文化とサービスを結びつけて、製品やサービスを訴求する。
有名人をブランドの広告塔に起用するのはその一例。
モノ消費、コト消費、トキ消費
消費の価値観は、モノ消費、コト消費、トキ消費に変化していると言われます。
① モノ消費(物的消費)
商品や製品(モノ)を購入することで満足を得る消費行動
例: 車、ブランドバッグ、家電の購入
② コト消費(経験消費)
物質的なモノではなく、体験やサービスに価値を見出す消費行動
例: 旅行、スポーツ、コンサート、ワークショップ
③ トキ消費(瞬間消費)
「今、この瞬間」にしか味わえない価値を重視する消費行動
例: 期間限定イベント、季節限定スイーツ、リアルタイム配信
経験価値に直接関係するのは、コト消費ですが、広く捉えればトキ消費も経験価値と捉えることができます。機能面での差別化が難しい時代においては、商品開発やマーケティングを行うにあたり経験価値の提供は重要なポイントとなります。
【参考】
バーンド・H. シュミット『経験価値マーケティング』ダイヤモンド社
平野敦士カール『カール教授のビジネス集中講義 マーケティング』朝日新聞出版
企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元