【相続】法的効果がなくても、遺言書に書くべきこととは?
DATE25.05.21
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回のテーマは、「遺言書の付言事項」です。
遺言書に何を書くかは、自由だが・・・
遺言書に何を書くかは、本人の自由です。
しかし、その遺言書に書かれたことに、法的な効果が発生するか否かは、その記載内容によります。
なぜなら、法的効果のある記載事項は、法律によって定められているからです。
法的効果のある記載事項とは?
法的効果のある記載事項としては、主に、以下の事項が挙げられます。
・「遺産の分割」「相続分の指定」「遺贈」など遺産承継に関する事項
・「認知」「相続人の廃除」といった相続人の身分に関する事項
・「遺言執行人の指定」「祭祀主宰者の指定」といった人選に関する事項
ちなみに、これら法的効果のある記載事項のことを、遺言事項といいます。
すなわち、遺言事項以外のことを遺言書に書いたとしても、それらには、法的な効果はないということです。
法的効果のない事項は、無意味なのか?
法的効果のない記載事項(遺言事項以外の事項)を「付言事項(ふげんじこう)」といいます。
たとえば、「家族へのメッセージ」「葬儀の希望」などが挙げられます。
たしかに、付言事項には法的効果はありませんが、「家族への想いを伝えることができる」「(故人の意思を知ることで)葬儀の段取りをスムーズに進めることができる」など、本人にとっても、家族にとっても、大いに意味のあるものだと言えるでしょう。
法的効果がなくても、付言事項は、決して無意味なものではありません。
伝えたいことがあるのなら、ぜひ、遺言書に書いておきたいところですね。
そして、相続トラブル防止のためにも、ぜひとも、書いておくべき付言事項があります。
相続トラブル防止のため、書いておくべき付言事項とは?
それは、「遺言書に記載された相続分の理由」などです。
たとえば、相続人が長男・二男・三男の3人の場合、その法定相続分は「長男1/3・二男1/3・三男1/3」です。
それが遺言書にて、「長男3/5・二男1/5・三男1/5」と、長男に多めの相続分が指定されていれば(※)、二男と三男は不満に感じるかもしれませんし、場合によっては相続トラブルにもつながりかねません。
※遺言書にて法定相続分とは異なる割合を指定すること自体は問題ありません
そんなとき、付言事項として、以下のような文章が記載されていたとしましょう。
私がまだ経済的に苦しかったとき、長男には苦労をかけ、そして大いに助けられた。
そのおかげで、十分な資産を築くことができたことから、その感謝の気持ちを込めて、長男に多めの相続割合とした。
二男と三男には、そのことを理解してほしい。
そしてこれからも、兄弟みんな仲良く暮らしほしい。
いかがでしょうか?
このように、相続分の理由がしっかりと書いてあれば(そして故人の想いが伝われば)、二男と三男の感情も幾分やわらぎ、無用な相続トラブルの抑止につながることでしょう。
また、相続人以外に遺産を遺す(遺贈)の際にも、その理由を、そしてその想いをしっかり書いておくことで、やはり相続人の不満をやわらげ、相続トラブル抑止となるはずです。
付言事項は、自由に書ける
法的効果のある遺言事項は、不備のないよう、遺言書の形式に則って、慎重に書かなければいけません。
それに対して、法的効果のない付言事項は、自由に書くことができます。
その分、ストレートに想いを伝えることができるので、遺された家族のことを考えながら、しっかりと想いを伝えたいものですね。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏