【年金】働きながら年金を受け取るときの注意点
DATE25.05.19
老齢年金は、原則として65歳でもらえる権利が発生しますが、「働いていると年金はもらえないのでは?」「年金が減らされてしまうの?」といった声も聞こえてきます。そこで今回は、働きながら老齢年金をもらうときの注意点を整理していきたいと思います。
働きながら年金をもらうときに気を付けておきたいポイントは次の2つです。
1.老齢年金をもらうときに厚生年金保険に加入している場合、在職老齢年金の仕組みにより、老齢厚生年金の一部又は全部が支給停止されることがあります。
2.雇用保険の高年齢雇用継続給付を受給する場合、特別支給の老齢厚生年金などの65歳前に受給する年金の一部が支給停止されます。
それでは、この2点について詳しくみていきましょう。
1.在職老齢年金の仕組みによる支給停止額の計算方法
厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金をもらう場合、老齢厚生年金について支給停止がかかることがあります。支給停止がかかるかどうかは、次のように判定します。
・「基本月額」(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)と「総報酬月額相当額」(標準報酬月額と直近1年間の標準賞与額の1カ月分相当額の合計)の合計額が51万円以下の場合
➡年金の支給停止はありません。
・「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が51万円を超える場合
➡年金の一部または全部の支給停止がかかります。
なお、支給停止額は次のように計算します。
支給停止月額=〔(基本月額+総報酬月額相当額)-51万円〕×1/2
※51万円は令和7年度の金額で、毎年改定が行われます。
この仕組みで支給停止の対象となる年金は、老齢厚生年金の「報酬比例部分」です。老齢厚生年金の「経過的加算額」や老齢基礎年金は支給停止されません。
例1:基本月額10万円、総報酬月額相当額38万円の場合
合計すると48万円で51万円以下のため、年金の支給停止はありません。
例2:基本月額14万円、総報酬月額相当額42万円の場合
合計すると56万円で51万円を超えるため、年金の支給停止がかかります。
支給停止月額:〔(14万円+42万円)-51万円〕×1/2=25,000円
支給される年金月額:14万円-25,000円=115,000円
自分の年金が支給停止になるのかどうか……については、上記のようにまずはご自身の「基本月額」「総報酬月額相当額」を把握して計算してみるとよいでしょう。
年金額や標準報酬月額などは、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認することができます。
2.雇用保険と年金の調整
65歳前に支給される「特別支給の老齢厚生年金」などを受給している方が、高年齢雇用継続給付を受給している間、年金の一部が支給停止になります。停止額は最大で標準報酬月額の4%(令和7年3月31日以前に60歳に到達している方は6%)です。
雇用保険の高年齢雇用継続給付については2024年11月のコラムを参照してください。
【年金】高年齢雇用継続給付の改正が行われます! | 2024年11月 | ごえんをつなぐコラム | 一般社団法人 日本金融人材育成協会
なお、65歳以降の老齢基礎年金や老齢厚生年金については、これらの雇用保険の給付との調整はありません。
複雑な制度ではありますが、働きながら年金をもらう場合は、こうした制度をきちんと理解しておきましょう。
社会保険労務士
後藤 朱