ごえんをつなぐコラム

【年金】年金法改正の概要① 在職老齢年金制度の見直し

DATE25.07.11

今回から数回に分けて、年金法改正の概要をわかりやすく解説していきます。

年金相談の現場では、改正に関するご質問をいただくことが増えてきており、世間の関心の高さを感じております。

年金改正法は、令和7年6月13日に成立、同月20日に公布されました。

主な改正内容は次のとおりです。

 

[年金制度改正の主な内容]

・社会保険の加入対象の拡大(令和8年10月~)

・在職老齢年金の見直し(令和8年4月~)

・遺族年金の見直し(令和10年4月~)

・保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引上げ(令和9年9月~)

・子の加算額の見直し(令和10年4月~)

・脱退一時金の見直し(公布から4年以内の政令で定める日~)  など

 

改正の実施時期は少し先のものもありますが、今回はこの中から、令和8年4月から実施予定の「在職老齢年金の見直し」について取り上げます。

現在の年金制度では、働きながら受け取る老齢厚生年金については、一定の収入を超えると在職老齢年金の仕組みにより年金の一部または全部が支給停止されます。

令和7年度は、賃金と厚生年金の月額の合計が「51万円」を超えると、厚生年金の支給額が減額される仕組みです。

厚生労働省の年金局の調査では、在職中で年金が停止されている人は受給者全体の16%とされています。「長年保険料を納めてきたのに、いざ受給開始年齢になっても支給されないのはおかしい!」という声も多く寄せられていました。

また、社会経済情勢を見ると、企業の定年延長が進み、60歳以降も働く人が増えています。こうした時代の流れの中で、「年金受給開始年齢を迎えても安心して働き続けられる環境を整えること」が重要とされ、今回の改正に至りました。

 

[改正内容のポイント]

今回の改正により、在職老齢年金の仕組みで支給停止となる基準額が、「月額62万円」に引き上げられます。今後はこの62万円を基準に、毎年度支給停止となる基準額が設定されることになります。

なお、令和8年度の支給停止となる基準額は、名目賃金の変動に応じて62万円から改定される可能性があります。実際の基準額は、例年のスケジュールですと1月下旬に厚生労働省から発表される予定です。

今回の改正により、今まで支給停止となっていた方の中にも、調整額の引上げにより一部年金を受け取れるようになるケースも多く出てくると見込まれています。この点は、多くの方にとって大変有意義な改正といえるでしょう。

今後、働きながら年金を受け取る場合には「在職老齢年金の基準額改正」についてきちんと把握しておくことが大切です。

なお、在職老齢年金の計算方法については、5月のコラムでも取り上げていますので、ぜひこちらもあわせてみていただけると幸いです。

【年金】働きながら年金を受け取るときの注意点 | 2025年5月 | ごえんをつなぐコラム | 一般社団法人 日本金融人材育成協会

 

 

社会保険労務士
後藤 朱

 

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