ごえんをつなぐコラム

【相続】相続廃除の、高いハードル

DATE25.09.22

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。

今回のテーマは、「相続廃除」です。

遺言書では、不十分

長男には、財産は一切渡したくないとしましょう。

その場合には、遺言書にて、長男の取り分をゼロとする相続分を指定すればよいのでしょうか?

いえ、長男には遺留分(※)があるので、長男がその遺留分を主張することで(たとえ、遺言書での長男の取り分がゼロでも)、遺産のうちいくらかは長男の手に渡ってしまうのです。

※一定範囲の相続人に認められた、最低限の遺産の取り分

もし、長男に財産を一切渡したくないのであれば、遺言書による相続分の指定ではなく、長男に対して、相続廃除の手続きを行う必要があるのです。

相続廃除によって、相続権を剥奪する

相続廃除とは、遺留分のある推定相続人の相続権を、家庭裁判所に請求をして、失わせることです。

相続廃除によって相続権が剥奪されれば、遺留分も失われることとなり、遺産は一切受け取ることはできなくなります。

しかし、ただ単に「気にくわないから」程度の理由では、家庭裁判所は、相続廃除は認めてはくれません。

相続廃除が認められるには、

① 被相続人に対する虐待行為があったこと

② 被相続人に対する重大な侮辱行為があったこと

③ その他の著しい非行があったこと

上記①~③のいずれかの要件に該当している必要があります。

そして、相続廃除が認められる基準は非常に厳しく、いずれの要件においても、推定相続人の行為が、「客観的に見ても家族関係を破壊するほどに重大な行為」であることが必要とされているのです。

被相続人の主観的な思いだけでは、ダメということなのです。

相続廃除が認められるほどの行為とは?

では、その「客観的に見ても家族関係を破壊するほどに重大な行為」とは、どのような言動でしょうか?

①(虐待行為)であれば、被相続人に対して、「日常的に殴る・蹴るなどの暴力をふるっていた」「大ケガを負わせた」などが挙げられます。

②(侮辱行為)であれば、被相続人に対して、「日常的に暴言を浴びせていた」「悪口をふれまわり、名誉を著しく傷つけた」などが挙げられます。

そして、

③(非行)について、これは漠然として分かりづらいのですが、具体的には、以下のような行為が挙げられます。

まったく仕事をせずにギャンブルにはまり、多額の借金をして、被相続人に肩代わりさせた

窃盗などの犯罪を繰り返し、被相続人に極度の迷惑をかけた

長年にわたって不貞行為をして、被相続人を精神的に苦しめた

もちろん、実際に認められるか否かは個々のケースによりますが、いずれにせよ、①②に匹敵するくらいの行為である必要はあるのです。

相続廃除は、簡単には認められない

なお、前述の行為については、それらが一過性のものであったり、被相続人の言動がきっかけであったりした場合には、相続廃除が認められない可能性もあります。

相続廃除が認められるには、それだけ高いハードルが求められるわけです。

実際、相続廃除が認められる割合は2割程度と言われています。

相続人にとって、相続権は非常に大切な権利であり、被相続人が「こいつには相続させたくはない!」と思っても、そう簡単に剥奪されるものではないということですね。

 

 

 

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

 

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