ごえんをつなぐコラム

【相続】未成年者控除は、プレゼントできる

DATE25.10.21

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。今回のテーマは、「未成年者控除」です。

未成年者のための、相続税の軽減制度

相続や遺贈によって、未成年者が遺産を取得することは珍しくありません。

そして、取得した遺産額や相続人等の状況によっては、相続税が課されることもあります。

ただ、未成年者については、成人するまでの間、まだまだ養育費や教育費などが必要であることも多いことから、相続税の負担を軽減してくれる制度があるのです。それが、相続税の未成年者控除です。

遺産取得者が8歳なら、100万円の減額

未成年者控除とは、相続や遺贈によって遺産を取得した者が未成年者(18歳未満)の場合、以下の金額を、その未成年者の相続税額から差し引いてくれるものです。

未成年者控除額

 10万円×[18歳-相続開始時の年齢(※)]※1年未満の端数は切捨て

たとえば、遺産を取得した未成年者が8歳4ヵ月の場合、その控除額は100万円となります。

※10万円×(18歳-8歳(4ヵ月は切捨て))=100万円

余った分は、扶養義務者に使ってもらえる

このように、未成年者の年齢によっては、未成年者控除額は、かなりの金額となるわけです。それゆえに、未成年者控除額が、その者の相続税額を超える(相続税額から控除しきれない)こともよくあります。

その場合、その控除しきれずに余った金額は、その未成年者の扶養義務者の相続税額から、控除することができる
のです。

たとえば、未成年者控除額が100万円で、その未成年者の相続税額が40万円であれば、60万円は控除しきれません。しかし、その控除しきれない60万円は、その未成年者の扶養義務者の相続税額から控除することができるのです。

仮に、扶養義務者の相続税額が80万円であれば、そこから60万円差し引き、その扶養義務者の相続税額は20万円に減額されるのです(下図参照)。

未成年者          相続税額40万円 - 未成年者控除額100万円 = 超過額60万円

当該未成年者の扶養義務者  相続税額80万円 - 超過額60万円      = 相続税額20万円

世間ではこれを、「未成年者控除は、(その扶養義務者に)プレゼントできる」とも言います。

このように、未成年者控除は使い勝手のよい制度でもあるわけですが、留意すべき点もあります。

以下に、その代表的なものを2つ挙げました。

法定相続人に、限られる

1つ目は、未成年者控除の対象者は「法定相続人」に限るということ。

つまり、未成年者だからといって、誰でも無条件に、未成年者控除を使えるわけではないのです。

たとえば、亡くなった人の「子」が相続により遺産を取得する場合、「子」は法定相続人なので、未成年者控除を受けることができます。

しかし、亡くなった人の「孫」が遺贈により遺産を取得する場合、「孫」は法定相続人ではないので(※)、たとえ未成年者であったとしても、未成年者控除を受けることはできないのです。

※但し、子の代襲相続人であったり、養子縁組をしている場合には、法定相続人となる

複数回受ける場合は、要注意

2つ目は、これまでに未成年者控除を受けたことのある場合には、未成年者控除額と、これまでの未成年者控除額の「使い残し」の、いずれか少ない金額が限度となることです。

少し分かりにくいですよね。具体的に説明しましょう。

たとえば、かつて10歳のときに、未成年者控除を50万円受けた者が、再度、12歳のときに未成年者控除の対象となった場合、そのときに実際に控除される未成年者控除額は、以下の①②のいずれか少ない金額となります。

①今回(12歳時)の未成年者控除額

10万円×(18歳-12歳)=60万円

②前回(10歳時)の未成年者控除額の使い残し(扶養義務者にプレゼントはしていないものとする)

10万円×(18歳-10歳)-50万円=30万円

よってこの場合、②の30万円となります。

前回(10歳時)の未成年者控除額は80万円(10万円×(18歳-10歳))ですが、実際に相続税額から控除された(未成年者控除を受けた)のは50万円ということで、30万円が「使い残し」です。

ですので、今回(12歳時)の未成年者控除額は60万円ですが、実際に相続税額から控除されるのは、30万円が限度となるのです。

 

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

 

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