【DX】うちの会社のDXは遅れているかの話
DATE25.10.20
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、DX経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(実践編)を担当している、中小企業診断士・ITコーディネータの木佐谷康です。
今回のテーマは、「うちの会社のDXは遅れているかの話」です。
「うちの会社は遅れていまして・・・」は社長の合言葉
DXやデジタル化の支援で中小企業を訪問した際に、必ずと言って良いほど聞かれるのが「うちの会社は遅れていまして・・・」「他社はもっと進んでいるんでしょうが・・・」といったキメ台詞です。DX推進の事例やネット等での紹介記事では、ピカピカのDX推進企業が紹介されることが多く、先進企業との差を感じられている経営者の方も多いと思います。
しかし、これまで数百社の中小企業のご相談をお請けしている経験を踏まえましても、ほとんどの中小企業の推進状況や課題は大きく変わりません。中小機構の「中小企業のDX推進に関する調査(2024年)」で、定量的に確認してみましょう。
まず、DXの取組み状況を見てみると、「すでに取り組んでいる」企業は2023年の14.6%に対して2014年は18.5%と4ポイント弱増えているものの、まだ全体の2割以下です。2023年に16.6%だった「取り組みを検討している」企業は2024年に23.5%となっていることから、多くの中小企業がそろそろ取り組む必要があると考えているようです。
一方、「取り組む予定はない」という回答も、2023年の37.2%から2024年は30.9%に減っているものの、依然として3割程度の中小企業はDX推進の入口にも到達していません。同調査では、従業員規模別や業種別の取組み状況も調査されていますので、興味がある方は確認してみてください。
次に、進捗状況について確認してみましょう。「DXに既に取り組んでいる」と回答した企業のうち、「デジタイゼーション(アナログで行っていた作業やデータのデジタル化を進めている)」という回答が2023年39.0%、2024年35.7%ともっとも多くなっており、多くの企業が作業やデータのデジタル化の段階にあることが分かります。
「デジタライゼーション(個別の業務や製造等のプロセスのデジタル化を進めている)」は同24.7%から28.6%、「デジタルトランスフォーメーション(デジタル技術を活用して全体的な業務やビジネスモデル、企業文化や風土の変革を進めている)」は同26.0%から28.1%と微増しているので、徐々にステップアップしている様子がうかがえます。
何から取り組めばよいか分からない
また、「うちの会社は遅れていまして・・・」と同様に、よく耳にする発言が、「何から取り組めばよいか分からない」、「他社はどうしているのか知りたい」というものです。専門家の支援を受ける場合は、課題の整理やプライオリティ付けから入る場合が多いですが、自社で課題を検討する際は、他社の取組みが参考になるので、改めて「中小企業のDX推進に関する調査(2024年)」を見てみましょう。
DXの具体的な取組み内容として最も多かった回答が、「文書の電子化・ペーパーレス化(2023年64.4%、2024年57.6%」でした。注文書はFAX、指示書は紙に出力しているケースは依然として多く、ペーパーレス化は中小企業に共通する課題と言えます。
次に、「営業活動・会議のオンライン化」(同47.1%、37.6%)、「ホームページの作成」(同47.1%、36.4%)が続いていますが、いずれも2023年から2024年に比率が下がっており、ある程度対策が進んでいることが分かります。
「クラウドサービスの活用」(同35.9%、31.2%)は、中小企業こそ取り組みたい課題の一つです。従来、経営者の中には、日々の事業運営に必要な運営コスト【OPEX(オペックス)とも言われます】を避け、新設備購入や事業成長のための資本的支出【CAPEX。キャペックスとも言われます】を優先する考えが強く、クラウドサービスを避ける風潮が見られました。
しかし、オンプレミスで自社サーバーを導入すると、OSやデータベースのバージョンアップやセキュリティ対策、トラブル時の対応などの見えない(社内リソースの)コストが発生し、トータルで考えれば、クラウドサービスの方がコストメリットが出ることもあります。選択と集中の考え方や人手不足対策、従業員のモチベーションなどの観点からも、人的リソースは本業に集中することが望ましいと言えます。
課題の5番目には、「セキュリティ対策強化」(同35.9%、27.4%)が入っています。最近では、中小企業にもランサムウェア攻撃や標的型攻撃が仕掛けられるようになり、データのデジタル化が進むのに応じて、サイバーセキュリティ対策の重要性が増します。
ちなみに、クラウドサービスを選択しない理由として、セキュリティ対策に不安があると答える経営者の方がいらっしゃいますが、そのような場合は銀行を例にお話しさせていただきます。仮に1億円の現金が手元にあった場合、銀行に預けるか、金庫を買って自宅に置くかと聞かれれば、ほとんどの方が銀行に預けると答えると思います。かつての銀行は、強盗や取り付け騒ぎなどが起こることもありましたが、今では特別な事情を除き、そのような不安を持つ方は少ないでしょう。
クラウドサービスも同様で、20~30年ほど前まではデータ消失や流出などが報道されることもありましたが、今ではだいぶ減ってきています。自宅の金庫=オンプレに大事なデータを置くより、銀行=クラウドサービスにデータを保管したほうが安全と言えるでしょう。ただし、セキュリティ対策がしっかりしたクラウドサービスを選択することは言うまでもありません。
DX経営アドバイザー検定試験講座講師
木佐谷 康