【DX】いまさら聞けないDXの話
DATE25.07.15
皆様、こんにちは。資格の学校TACで、DX経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(実践編)を担当している、中小企業診断士・ITコーディネータの木佐谷康です。
今月から、DXに関するプチネタやトピックスをご紹介するコラムを担当させていただきます。よろしくお願いします。
第1回のテーマは、「いまさら聞けないDXの話」です。
DXとFacebookは同級生?
DX(Digital Transformation)という概念は、2004年にスウェーデンにあるウメオ大学のストルターマン教授(当時)が、論文の中で使用したのが始まりと言われています。日本では、2018年に経済産業省が「DXレポート」を公開した頃から使われるようになりました。
DXという概念が登場した2004年当時のIT業界を振り返ると、20年以上前の状況がイメージできるかもしれません。2004年2月には、アメリカでFacebook、日本ではmixiが誕生しています。Facebookはよくご存じのSNSですが、mixiも当初は招待制のSNSとして日本で多くのユーザーを集めました。
2022年にイーロン・マスク氏がTwitter(現 X)を買収したことでアカウント凍結や機能制限などが打ち出され、不安を持ったユーザーがTwitter離れを起こした際に、mixiが再注目されています。最近では、レトロブームもあってか、Z世代がmixiを利用するケースも多いようです。
一方、通信業界では、2004年におサイフケータイが発売されています。おサイフケータイは、ソニーが開発した非接触ICカード技術「FeliCa」を使用して、電子マネー、ポイントカード、会員証などをまとめて利用できる携帯電話向けサービスです。
2011年にはAndroid端末にも搭載されていますが、当時はNTTドコモのmovaの最新機能として登場しました。
また、前年の2003年にはメガピクセル携帯電話が発売されています。発売当時は高精細な写真が撮れると話題になりましたが、1メガピクセルは100万画素なので、最新のiPhone16に搭載された4,800万画素のカメラと比べると相当な差がありますね。
Digital TransformationはなぜDXと呼ばれる?
顧客体験を意味するCX(Customer Experience)やユーザー体験を表すUX(User Experience)には、いずれもe’x’perienceにXが含まれていますが、Digital TransformationにはXは含まれていません。
それなのになぜDXと呼ばれるのか、不思議に思ったことはないでしょうか?セミナー等で理由を知っているかどうか聞いてみると、おおよそ5~6割の方はご存じないようです。
その答えは、英語の接頭辞を略す際の習慣にあります。Transformationの接頭辞である「trans-」には、「~を越える」、「~を通って」、「~の向こう側へ」などの意味が含まれています。
例えば、日本語で輸送と訳される「Transport」は、「trans-=越えて」と「port=運ぶ」が組み合わされており、ある場所から別の場所へ何かを運ぶことを意味しています。このように、接頭辞「trans-」の持つ意味が「cross」と同義であることから、英語圏では「trans-」を「X」と省略するようになったようです。
Transformationの動詞形である「Transform」も、「trans-=越えて」と「form=形作る」の組み合わせで、「形を越えて変える」という意味合いを持っています。
こうしたことから考えても、DXは単にITツールの導入やデジタル化がゴールなのではなく、デジタルを利用して「形を越えて変える」、つまり企業変革であり、「持続的な稼ぐ力と自己変革力の向上」を目指すべきことがよく分かります。
ちなみに、「trans-」を「X」と省略する方法は、日本のIT業界でもかつて使われていました。
日本電気(NEC)が、1982年から2003年まで販売していたベストセラーPCシリーズである「PC-9800シリーズ」のキーボードにはXferキーとNferキーが搭載されており、Xferキーが「Transfer=変換」キー、Nfer「Not transfer=無変換」キーとして使われていました。
シニア層の読者の中には、覚えている方もいるのではないでしょうか?
DX経営アドバイザー検定試験講座講師
木佐谷 康