ごえんをつなぐコラム

【DX】DXにメリットはあるかの話

DATE25.09.17

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、DX経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(実践編)を担当している、中小企業診断士・ITコーディネータの木佐谷康です。

今回のテーマは、「DXにメリットはあるかの話」です。

政府がDX推進に力を入れるのは中小企業の生産性を上げたいから

前回の「政府のDX方針が変わった話」で、2018年以降のDX推進の歴史を振り返りましたが、なぜ政府はここまでDXに力を入れているのでしょうか? その答えの一つが、日本の生産性の低さにあると言われています。

IMFが発表した2024年の世界の名目GDPランキングでみると、日本は第4位となっており、ドイツに抜かれたとはいえ依然として上位にランクされています。

一方、公益財団法人日本生産性本部が毎年発表している「労働生産性の国際比較」では、1人当たりGDPは2023年時点でOECD38か国中26位となっており、2016年の18位から7年で8ランクも下がっています。

1人当たりGDPが伸び悩んでいる原因として考えられているのが、1人当たりの労働生産性の低さにあります。同調査では、2023年時点の日本の1人当たり労働生産性は、OECD38か国中32位、92,663ドルとなっており、OECD平均の125,003ドルを大きく下回っている状況です。

こうした1人当たりの生産性の低さが、1人当たりGDPの低さを生み、実質賃金の伸び悩みにつながっているというのが政府の見立てだと考えられます。

また、日本の中でも大企業と中小企業を比較すると、従業員1人当たり付加価値額(労働生産性)は、中小企業は大企業の半分以下というデータが出ており(2022年版中小企業白書)、企業数で99.7%を占める中小企業の労働生産性の向上が大きなカギを握っていると言えます。

こうした背景を踏まえて、中小企業の労働生産性を上げるための切り札としてDXに白羽の矢が立っているというのが現在の状況です。

DXに取り組めば、労働生産性や売上は上がるのか?

では、政府の見立て通りに、DX推進→労働生産性向上→増収増益というシナリオは成立するのでしょうか? 前回の「政府のDX方針が変わった話」でもご紹介した「DX支援ガイダンス」の中に、その答えが掲載されていました。

同ガイダンスで、東京商⼯リサーチが2021年に行った「令和3年度中小企業の経営戦略及びデジタル化の動向に関する調査に係る委託事業報告書」が紹介されており、DXの取組みを4段階(未着手、デジタイゼーション、デジタライゼーション、DX)に分けて、2015年と2021年の労働生産性・売上高の変化が分析されています。

労働生産性は、「未着手」と「デジタイゼーション」の段階の企業がマイナスだったのに対して、「デジタライゼーション」は+262千円/人、「DX」は+824千円/人と大きくプラスになっています。また、売上高もほぼ同様の結果で、「アナログ」の段階の企業は-5.9%だったのに対して、「DX」の段階の企業は+13.8%と、20ポイント近い差が生じています。

そもそも労働生産性や売上が高い企業であれば、DXに予算や人員を振り向けられるという反対のシナリオも考えられますが、そうした影響を差し引いたとしても、DXに取り組むことで労働生産性や売上が上がる可能性がありそうだということは言えると思います。

また、独立行政法人 中小企業基盤整備機構の「中小企業のDX推進に関する調査(2024年)」には、DXによる具体的な成果がまとめられています。最も回答が多かったのが、「業務の自動化、効率化」の56.3%で、「コストの削減、生産性の向上」(55.0%)、「働き方改革、多様な働き方の実現」(37.7%)、「データの一元化、データに基づく意思決定」(36.4%)と続いています。

「ビジネスモデルの変革、営業・マーケティングの効率化」(20.5%)、「顧客接点の強化」(19.9%)、「新たな商品・サービスの開発・提供創出」(19.9%)と回答している企業も2割前後あり、コストダウンや効率化にとどまらず、DXのゴールである「持続的な稼ぐ力と自己変革力の向上」に成果を出している中小企業も現れています

今からでも決して遅くないので、1社でも多くの中小企業がDXに取り組んでいただくように期待しています。

 

DX経営アドバイザー検定試験講座講師
木佐谷 康

 

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