【相続】いらない土地は、国に引き取ってもらえるのだが・・・
DATE25.06.23
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回のテーマは、「相続土地国家帰属制度」です。
遺産の中に、「負」動産が
亡くなった親の遺産の中に、どうにも困った土地があったとしましょう。
それは、辺鄙なところにある使い勝手の悪い土地で、自身で利用する予定はまったくなし。
売ろうにも、買い手はまったく現れずに、売るに売れない状況で、もちろん、借り手もまったく期待できない状況だとします。
もし、そんな土地を相続したとなると、ただただ維持管理の手間と費用がかかるだけで、まさに「負」動産というわけですね。
相続放棄の落とし穴
この場合、まず頭に浮かぶのは、相続放棄でしょう。
たしかに、相続放棄をすれば、そんな「負」動産を相続することは拒否できます。
しかし、相続放棄をすれば、他の遺産も一切、相続できません。
なので、他に相続したい遺産がある場合には、相続放棄は使うことはできません。
というわけで、嫌々ながら、そんな「負」動産を相続するも、管理不十分なまま放ったらかし・・・
という状況が社会問題化しているのです。
国に引き取ってもらえる制度が創設
そんな状況を鑑みて、2023年4月27日から施行されているのが「相続土地国家帰属制度」です。
これはその名のとおり、相続した土地を、国に引き取ってもらうことができる制度です。
この制度によって、他の遺産は相続しつつも、「いらない(相続したくない)土地」のみを手放すこと
が可能となったのです。しかし、この制度には、以下の2つの留意点があります。
費用がかかる
1つ目は、この制度を利用するには、一定の費用がかかることです。
まず、この制度の申請の際には、土地1筆につき14,000円の審査手数料がかかります。
この審査手数料は、申請を取り下げたり、申請が却下・不承認となっても返還はされません。
そして、申請が承認され、国に引き取ってもらう際には、負担金として、当該土地の10年分の管理費用相当額がかかります。
その土地が宅地であれば、面積に関係なく原則20万円です。
ただし、その宅地が、都市計画法の市街化区域又は用途地域が指定されている地域内の土地の場合、その面積に応じて算定されます。
たとえば、面積100㎡であれば55万円程度と、かなりの金額となります。
もっとも、国に引き取ってもらえなければ、管理費用は(10年分どころではなく)一生涯負担し続ける可能性もあるわけですから、
この制度を利用するメリットを感じる人は多いことでしょう。
どんな土地でも、OKではない
2つ目は、どんな土地でも、引き取ってもらえるわけではないことです。
やはり、管理・処分に相当な費用や労力を要する土地については、国も拒否するわけで、たとえば、以下のような土地は引き取ってはもらえません。
・建物などがある土地
・担保権などが設定されている土地
・通路など、他人によって使用される土地
・境界不明瞭など、権利関係に争いがある土地
・土壌汚染などがある土地
・危険な崖などがある土地 など
また、共有の土地については、共有者全員の合意が必要となります。
1人の共有者が単独で、自身の持分だけを引き取ってもらうことはできません。
ですので、この相続土地国家帰属制度については、無条件に、誰でも手軽に使える制度というわけではありません。
ですが、有用な制度であることは間違いないので、選択肢の1つとして、知っておいて損はないでしょう。
なお、前述のように、この制度の施行日は2023年4月27日ですが、それ以前に相続した土地についても適用することができます。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏