ごえんをつなぐコラム

【相続】義母(義父)の介護は、報われるのか?

DATE22.06.21

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。

今回のテーマは、(今更ながらではありますが)3年前の法改正である「相続人以外の親族の請求権」についてです。

注目度の高い改正でもありましたので、まだご存じない方のためにも、取り上げさせていただきました。

 

【最近までは、報われなかった・・・】

長年、夫の親の介護に努めてきた妻は、報われるのでしょうか?

ちなみに、ここでの「報われる」とは、「金銭的に報われる」との解釈で進めていきます。

結論から言えば、つい最近までは、報われませんでした

なぜなら、妻は、夫の親の相続人(※)ではないからです。これまでの法律では、何年、何十年と献身的に介護をしてきたとしても、相続人ではない人は、遺産を受取ることはできなかったのです。

※相続人とは、亡くなった人の「配偶者」と「一定範囲の血族」に限られる

なので、まったく介護をしてこなかった夫の兄弟姉妹が、「ありがとう」の一言も言わず、遺産を分け合ったとしても、(法律的には)文句は言えなかったのでした。遺産分割の際、(妻の介護分を考慮して)夫の取り分を増やしてもらえる可能性はありますが、妻が直接報われることはありませんし、夫がすでに亡くなっており、その代襲相続人となる子供もいないとなると、妻はまったく報われないのでした。

 

【法改正により、報われるようになった!】

それが法改正によって、2019年7月1日以降、被相続人の「相続人以外の親族」が、無償で被相続人の介護等を行った場合には、相続人に対して金銭を請求できるようになったのです。

これにより、これまでは報われなかった相続人以外の親族も、報われるようになったのです。

なお、親族とは、亡くなった人の「6親等以内の血族・3親等以内の姻族(配偶者の血族および血族の配偶者

」なので、冒頭例のように、夫の親の介護に努めてきた妻は、「1親等の姻族」として金銭を請求できるのです。他にも、亡くなった人の甥や姪、いとこなども対象となるので、かなり広い範囲の人が対象となります。なのでこれは今後、多くの人にとって関係してくる改正点と言えるでしょう。


【あくまでも「請求権」である】

そんな注目の改正点ですが、注意点があります。

それは、介護に努めてきた親族は相続人となったわけではないので遺産の相続権はなく、あくまでも、「金銭的請求権」が認められたに過ぎないことです。

すなわち、自ら、相続人に対して請求しなければ、やはり報われることはないのです。

ちなみに、請求された相続人は、(相続人が複数いる場合には)自身の相続割合に応じて、その請求額を負担することとなります。

なお、請求された相続人が、その請求額をすんなりと受け入れてくれればよいのですが、そうでない場合も少なくないでしょう。その場合には、一定期間内であれば、家庭裁判所に調停・審判を請求することができます。ただし、「相続開始を知ったときから6ヵ月または相続開始から1年」を経過すると、家庭裁判所への請求はできなくなるので、相続人と揉めそうな場合には要注意です。

法改正が行われたとはいえ、まだまだ課題は多そうではありますが、少なくとも、相続人以外の親族の「請求権」が認めらえたことは大きな前進でしょう。今後、この請求権がより認知されていくことで(そして、事例も積み重なることで)、相続トラブル予防の一助になればいいですね。

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

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