ごえんをつなぐコラム

【年金】身近な人が亡くなったとき、遺族年金は誰がもらえるのか

DATE22.09.13

「もしも、配偶者が亡くなってしまった場合、遺族年金はもらえるのでしょうか…」

年金相談を受けていると、よくいただく質問です。

公的年金には、老後の生活の支えとしての役割があるほか、いざというときの生活を支えるという役割もあります。

身近な人が亡くなった場合、その方と一緒に生活をしていた(生計を維持していた)一定の遺族の方に、遺族基礎年金や遺族厚生年金が支給されます。

今回は、遺族基礎年金、遺族厚生年金についてみていきましょう。

 

・遺族基礎年金の対象となる方

遺族基礎年金は、国民年金から支給されます。遺族基礎年金の対象となる亡くなった方の要件、ご遺族の方の要件を見ていきましょう。

 

<亡くなった方の要件>

次の①~④のいずれかに該当する方が対象となります。

①国民年金の被保険者である間に亡くなったとき

②国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、

日本国内に住所を有していた方が亡くなったとき

③老齢基礎年金の受給権者(受給資格期間*を満たす方に限る)だった方が亡くなったとき

④受給資格期間を満たす方が亡くなったとき

※受給資格期間:保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間をあわせて原則25年以上

※①、②の場合は保険料納付要件が問われます。保険料納付要件とは、①保険料納付済期間や保険料免除期間が国民年金加入期間の3分の2以上あること、または②死亡した方が65歳未満の場合は、死亡日前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に未納がないことのいずれかをクリアしていることです。

 

<ご遺族の要件>

①子のある配偶者

②子

※子は、18歳到達年度末日までの子もしくは20歳未満で一定の障害状態にある子です。

遺族基礎年金の年金額は777,800円(令和4年度)です。

18歳到達年度末日までの子がいる場合は、子の加算がつきます。

加算額は、2人目まで223,800円3人目以降は74,600円です(金額は令和4年度)

 

・遺族厚生年金の対象となる方

次に、厚生年金保険から支給される遺族厚生年金の対象となる、亡くなった方の要件とご遺族の要件をみていきましょう。

 

<亡くなった方の要件>

厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方で、次の①~⑤のいずれかに該当する方が対象となります。

①厚生年金保険の被保険者である間に亡くなったとき

②厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に亡くなったとき

③障害等級1級または2級の障害厚生年金を受給している方が亡くなったとき

④老齢厚生年金の受給権者(受給資格期間を満たす方に限る)であった方が亡くなったとき

⑤老齢厚生年金の受給資格期間を満たした方が亡くなったとき

※①、②の場合は保険料納付要件が問われます。保険料納付要件は、遺族基礎年金と同様です。

 

<ご遺族の要件>

次の①~⑤のうち、最も順位が高い方が遺族厚生年金を請求することができます。

(18歳到達年度末日までの子、または20歳未満で一定の障害状態にある子に限る)

③死亡当時に55歳以上の夫父母

(18歳到達年度末日までの孫、または20歳未満で一定の障害状態にある孫に限る)

⑤死亡当時に55歳以上の祖父母

※夫の受給開始は60歳からです。ただし、遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間に、遺族厚生年金を受給することができます。

※父母、祖父母の受給開始は60歳からです

 

遺族厚生年金の年金額は、亡くなった方の老齢厚生年金の4分の3となります。

また、子どもがいない妻(40歳以上)は、中高齢寡婦加算額の加算があります。

ここで、遺族の方は「亡くなった方に生計維持されていること」が必要となります。

生計維持が認められるための原則的な要件は、亡くなった方と同居していること年収が850万円未満(所得655.5万円未満)であることです。

 

では、夫婦で子どもが1人いる場合、遺族基礎年金や遺族厚生年金がどのように支給されるか、具体的に見ていきましょう。

 

例1 50歳の夫(厚生年金保険に加入中、保険料納付要件は満たしている)が亡くなり、ご遺族が48歳の妻(年収300万円)、12歳の子の場合

  • 子が18歳になる年度末日まで

→妻が遺族基礎年金+遺族厚生年金を受給

  • 子が18歳到達年度末日を過ぎた後

→妻が遺族厚生年金+中高齢寡婦加算額(65歳になるまで)を受給

※遺族基礎年金は子が18歳到達年度末日をもって失権

 

例2 50歳の妻(厚生年金保険に加入中、保険料納付要件は満たしている)が亡くなり、ご遺族が48歳の夫(年収300万円)、12歳の子の場合

  • 子が18歳になる年度末日まで

→夫が遺族基礎年金を受給(遺族厚生年金は夫55歳未満であるため受給できない)

→子が遺族厚生年金を受給

  • 子が18歳到達年度末日を過ぎた後

→夫の遺族基礎年金、子の遺族厚生年金はともに失権

 

遺族年金は、要件が複雑です。身近な人が亡くなると、辛く悲しく、手続き等もたくさんあって大変です。落ち着いたときに、お近くの年金事務所に相談に行ってみてくださいね。

社会保険労務士
後藤 朱

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