ごえんをつなぐコラム

【相続】死因贈与と遺贈とでは、いったい何が違う?

DATE23.02.22

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。

今回テーマは、「死因贈与と遺贈との違い」です。

 

【死因贈与と遺贈は、ほぼ同じだが…】

死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力が生じる贈与のことです。

たとえば、「私が死んだら、土地はAさんにあげます」といった贈与のことで、贈与者の死亡により財産が移転します。

遺贈とは、遺言による財産の無償移転のことで、こちらも、遺言者の死亡により財産が移転するという点では、まったく同じです。

 

実際、死因贈与は原則として遺贈と同様に取り扱われ、贈与税ではなく相続税の対象となります。
となると、死因贈与と遺贈とでは、いったい何が違うのでしょうか?

 

【合意に基づくものか、一方的な意思表示か?】

死因贈与と遺贈との決定的な違い、それは「合意に基づくもの」か、それとも「一方的な意思表示」であるかです。


死因贈与は、財産を「あげる人(贈与者)」と「もらう人(受贈者)」との合意に基づくもの
です。
一方、遺贈とは、「あげる人(遺贈者)」の一方的な意思表示、すなわち単独行為です。

 

遺言とは「相手方のない単独行為」ですので、「もらう人(受遺者)」の意思確認はないことから、遺言者が死亡した後、その遺贈を知った受遺者から「そんなのいらないよ」と、その遺贈を放棄されてしまう可能性もあるわけですね。

 

ですので、生前にきちんと贈与の内容を明確にして、死亡後には確実に、その通りに資産承継を実行したいのであれば、当事者の合意に基づいて契約する死因贈与の方が安心なのです。死因贈与であれば、受贈者から、一方的に解消することはできませんので。

 

【書面がいるのか、いらないのか?】

遺贈の場合、遺言の作成は絶対要件です。

しかし、その遺言に不備があると無効となってしまいますし、そもそも、遺言が発見されないリスクもあります(遺言書保管制度を利用しない自筆証書遺言の場合)。公証役場で公証人に作成してもらう公正証書遺言にしておけば安全確実ですが、手間と費用がかかってしまいます。

 

一方、死因贈与の場合、必ずしも贈与契約書の作成は必要ありません(口約束でもOK)。

死因贈与では、(死因贈与契約を交わした当事者である)受贈者がいるわけですから、書面がなくても有効なのです。

とはいえ、無用なトラブル等を避けるためにも、書面で契約しておいた方が望ましいですが。

 

【死因贈与のデメリット】

このように、「贈与者の意思通りに確実に資産承継ができる」「形式は自由」といったメリットのある死因贈与ですが、不動産を贈与する場合は要注意です。

なぜなら、遺贈と比べ、下記のような税金面でのデメリットがあるからです。

 

・不動産取得税(不動産の取得にかかる税金)

遺贈  :受遺者が相続人であれば非課税となり、相続人以外の場合にのみ課税される

死因贈与:受贈者が誰であっても課税される

※包括遺贈の場合を除く

 

・登録免許税(登記を行う際にかかる税金)

遺贈  :受遺者が相続人であれば税率は「固定資産税評価額×4/1000」で、相続人以外の場合は「固定資産税評価額×20/1000」

死因贈与:受贈者が誰であっても、税率は「固定資産税評価額×20/1000」

 

死亡後に財産を譲りたい相手がいる場合、上手く活用すれば魅力的な死因贈与ではありますが、そんな税金面でのデメリットにも十分留意して、選択したいものですね。

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

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