ごえんをつなぐコラム

【企業経営】リモートワークで生産性は上がるのか?

DATE23.07.03

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。

新型コロナウイルスの位置づけが「5類感染症」へ変更されたことに伴い、在宅勤務からオフィス勤務に移行し、がっかりしている方もいらっしゃるかもしれません。在宅勤務の方が生産性が上がると思われる方も多いでしょう。

今回は、リモートワークと生産性の関係について考えてみたいと思います。

 

■在宅勤務で生産性は上がるか?

まず、企業の生産性は次の式で表されます。

企業の生産性=付加価値額(あるいは売上や利益)÷従業員数(あるいは総労働時間)

私たちは、「コロナ禍でリモートワークが進み、生産性が上がっている」と直感的に考えています。確かに在宅勤務が進めば、出勤時間が抑えられ、無駄な会議が控えられるといった効果が見込めるため、上の式での総労働時間を減らす面はあるでしょう。

しかしながら、リモートワークで削減できるようなことは、そもそも付加価値がないこと、言い換えれば売上や利益には直接影響がないことである点には注意が必要です。

付加価値は、人と人との協働によって生まれます。在宅などで1人で仕事していると他の人とのコミュニケーションの機会が失われがちです。もちろん、オンラインミーティングもありますが、付加価値につながるような、いわば暗黙知的なアイデアを伝える手段としてはまだ限界があるように思います。

 

■浮いた時間を、新たな付加価値の創造に向ける

時間の短縮が実現しても、おそらく所定の就業時間の関係で労働時間の絶対数は変わらないでしょう。その一方で付加価値化が図られなければ売上や利益が低下するので、結果的には生産性は落ちることになります。実際にアメリカでは、ヤフーやIBMが、原則在宅勤務廃止に移行しています。

新型コロナウイルスの影響で、そもそも無駄なことが見直されることは歓迎すべきことです。しかしながら、無駄の削減で浮いた時間を、新たな付加価値の創造に向けなければ、単に時間の節約になるだけで、真の意味での生産性の向上(企業としての成長)には何も貢献しないことは意識したいところです。

 

企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元

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