ごえんをつなぐコラム

【年金】事実婚関係について

DATE23.09.12

今日は年金法における「事実婚」について取り上げていきたいと思います。

結婚して夫婦になる際、法律婚の場合、お住まいの市役所、区役所に婚姻届を提出します。夫婦で新しい戸籍を作り、同じ戸籍に入ります。(相手方がもともと筆頭者になっていた戸籍に入る形もあります)

しかし現代においては、夫婦にもさまざまな形があります。
婚姻届を出して同じ戸籍に入ることだけが夫婦ではなく、事実婚関係として戸籍は別々のままお互いパートナーとして歩んで行く方もいます。

さて、事実婚関係にある方の場合、年金の請求手続きはどうなるのでしょうか。
まず、年金法における「配偶者」「夫」「妻」の定義を確認してみましょう。
国民年金法第5条第7項、厚生年金保険法第3条第2項においては、次のように定義されています。


この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。

定義において「事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と規定されています。この事実上婚姻関係と同様の事情にある者という点については、通達で次のように定められています。

事実婚関係にある者とは、いわゆる内縁関係にある者をいうのであり、内縁関係とは、婚姻の届出を欠くが、社会通念上、夫婦としての共同生活と認められる事実関係をいい、次の要件を備えることを要するものであること。

①当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係を成立させようとする合意があること。
②当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在すること。

平成23年3月23日年発0323第1号 日本年金機構理事長あて厚生労働省年金局長通知

 

したがって、これらの要件を満たして事実婚関係にある場合は、年金においては配偶者と同じように請求することができるということになります。
年金給付関係の請求において、夫婦関係を証明するための書類としては戸籍謄本があります。加給年金や振替加算、遺族年金等の請求を行う際、法律婚の場合は戸籍で夫婦関係を確認しますが、事実婚関係については戸籍では証明することができないため、添付書類が別途必要になります。具体的には、以下のA、Bの添付書類が必要です。

A.事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書(第三者による証明が必要)

B.生計同一関係を証する書類

請求手続きを行う際、添付書類については、年金事務所に確認をしましょう。

なお、重婚的内縁関係にある場合(戸籍上配偶者がいながら、他の者と内縁関係にある場合)は、法律婚が優先となりますが、法律婚による関係がその実体を全く失ったものとなっているときに限って、内縁関係にある者を事実婚関係にある者として認定するとされています。

社会保険労務士
後藤 朱

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