ごえんをつなぐコラム

【相続】相続財産を、3年以内に売ったなら・・・

DATE24.02.21

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。

前回コラムでは、新しいNISAの普及により、今後、株式等を相続するケースが増えるであろうと書きました。

そこで今回は、相続した株式等(資産)を売却した場合の特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)をテーマにしました。

 

【売却益にかかる税金は?】

資産を売却して儲けが出れば、それは譲渡所得として、所得税・住民税がかかります。

譲渡所得の課税方法や税率は、売却した資産の種類や所有期間によって異なりますが(詳細は割愛)、株式等の場合、売却益には約20%の税金がかかります。

なお、売却益(譲渡所得)の計算式は、以下の通りです。

売却益(譲渡所得)=売却価格-(取得費+譲渡費用)

上場株式の場合、基本的には、取得費は購入代金+購入手数料、譲渡費用は売却手数料となります。

最近では、売買手数料は極めて低いので(もしくは無料)、「売却価格(売却時の株価)-購入価格(購入時の株価)」と考えても差し支えはないでしょう。

 

【相続で手に入れた資産は?】

それでは、相続によって手に入れた資産を売った場合は、どうなるのでしょうか?

相続で手に入れたということは、基本的には、その取得費は0円ですから、売却価格がほぼそのまま、売却益となるのでしょうか?

もしそうであれば、売却益(譲渡所得)はかなり大きくなり、税負担が厳しいですよね。

そこは安心してください。相続で手に入れた資産については、被相続人の取得費を引き継ぐことになります。

たとえば、亡くなった親が生前に200万円で手に入れた株式を相続し、それを500万円で売却した場合には、その差額の300万円が売却益(譲渡所得)となるのです。

 

【取得費が分からないときは?】

そうなると気になるのが、被相続人の取得費ですね。

株式等の取得費を調べる方法としては、基本的には、金融機関から送られてくる「取引報告書」で確認することになります。

取引報告書以外にも、「取引残高報告書」などの書類でも確認できる場合もあります。

それら書類がない場合には、金融機関に「顧客勘定元帳」を発行してもらい、そこから確認することもできます(原則、過去10年以内に取得している場合)。

書類で確認できないとなると、被相続人のメモや日記などが頼りとなります。

それでも分からない場合には、発行会社の株主名簿等から株式の取得時期を把握して、その時期の相場を基にして取得費を計算することもできます。

 

それでも、相当過去の取得となると、取得費が分からないことも少なくありません。

そこで、取得費が不明な場合には、概算取得費として売却価格の5%とすることができます

たとえば、売却価格が200万円なら、取得費を10万円とすることができるのです。

ちなみに、実際の取得費が、この「売却価格の5%(前例だと10万円)」を下回る場合でも、この概算取得費を適用することができます(※)。

※売却価格から差し引く取得費が、実際の取得費より大きくなるので(譲渡所得が小さくなるので)有利

 

【相続財産への嬉しい特例とは?】

さて、ここでようやく、今回テーマの「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」です。

これは、相続で手に入れた資産を、一定期間内に売却した場合、相続の際に支払った相続税額の一部を取得費に加算できる特例です。

ですので、取得費加算の特例とも言います。

取得費が大きいほど、その売却益(譲渡所得)は小さくなります。

売却益(譲渡所得)が小さくなれば、その分だけ税金は安くなるので、これは非常に有難い特例なのです。

相続税を支払って相続した資産を売って、そこでまた所得税・住民税が普通に課せられては、厳しいですよね。

そこで、相続税と所得税・住民税の二重課税を防ぐために、この特例があるのです。

 

なお、取得費に加算する相続税額は、以下の通りです。

取得費に加算する相続税額=相続税額 × 譲渡資産の相続税評価額/(相続税の課税価格+債務控除額)

たとえば、以下のケースで計算してみましょう。

・相続税額       :80万円
・譲渡資産の相続税評価額:1,000万円
・相続税の課税価格   :2,000万円
・債務控除額      :0円

この場合、取得費に加算する相続金額は以下のように40万円となります。

取得費に加算する相続税額=80万円×1,000万円/(2,000万円+0円)

一見、ややこしいようですが、つまりは、実際に支払った相続税額のうち、売却した相続資産に対する割合分(上記であれば、80万円の1/2)が、取得費に加算されるということなのです。

 

【特例の要件は?】

ただし、この特例を適用するためには、以下の要件があります。

① 相続や遺贈により財産を取得した者であること
② その財産を取得した者に相続税が課税されていること
③ その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

 

上記①~③をすべて満たす必要があるわけですが、③の太字部分が、今回タイトル「相続財産を、3年以内に売ったなら・・・」につながってくるわけです。

ちなみに、相続税の申告期限は「相続開始のあった日の翌日から10ヵ月以内」です。

ですので、相続開始日を起点とすれば、この特例の譲渡期限は相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内となります。

こちらの表現の方が、分かりやすいかもしれませんね。

いずれの要件も、決してハードルは高くはないでしょう。しかし、特例の適用を受けるためには確定申告が必要となり、自動的に適用はされないので、注意が必要です。

 

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

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