ごえんをつなぐコラム

なぜいつもプロジェクトは遅れるのか?その理由と対処法を考える

DATE20.06.26

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。余裕(バッファ)を見込んでいたはずなのにプロジェクトの期限は大抵遅れがちです。今回はプロジェクトマネジメントについて考えます。

 

■計画錯誤

人はかかる時間を甘く見積もる傾向があります。「時間や予算など計画完遂に必要な資源を常に過小評価し、遂行の容易さを過大評価する傾向のこと」を、計画錯誤といいます。

 

たとえば、ある調査で論文作成に要する日数について、学生たちが予想した最短日数の平均は27日で、最長日数は49日でした。しかし、実際にかかった日数は平均56日でした。最短のケースの日数で書き終えた学生はほんの一握りで、最長のケースと予想した日数で書き上げた学生ですら、半分もいなかったのです。

 

集団になると、個人よりもタスク完了に要する時間をさらに軽く見積もることが、多くの研究で明らかになっています。

 

期限のある作業を行う際に、余裕時間があればあるほど、実際に作業を開始する時期を遅らせてしまうことを、学生症候群といいます。夏休みの課題について、まだ十分な時間があるのだから手をつけなくていいだろうと思っていると、そのうちバッファを食いつぶしてしまいます。

 

パーキンソンの法則

パーキンソンの法則とは、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」というものです。

 

なぜ、そのようなことになるのでしょうか。たとえば、上司から命じられたあるタスクについて、作業時間を15時間、余裕を5時間と見積もったとします。実際に15時間で終わったとしても、次のタスクが振られてしまうとしたら、どうでしょうか。それを恐れるメンバーは、ブラッシュアップと称して、残った5時間を費やしてしまうことになります。

 

どうすればプロジェクトの期限を守れるか?

では、どうすればプロジェクトの期限を守ることが出来るのでしょうか。計画錯誤や学生症候群に対しては、人間にはそのような傾向があることを自覚するだけでも効果があります。

 

パーキンソンの法則については、バッファマネジメントが有効です。ベストセラーとなった「ザ・ゴール」で有名なエリヤフ・ゴールドラット博士によれば、バッファを食いつぶす理由は「見積もりとバファをいっしょくたにしてしまうから」です。

 

たとえば、プロジェクトがタスクA⇒タスクB⇒タスクCの順に進むとしましょう。各タスクの作業見積りを6日、バッファを4日として、全体で30日で完了する計画を立てたとします。この場合、パーキンソンの法則に従い、各バッファはタスクごとで食いつぶされてしまいますから、何かトラブルが発生すると30日では完了しなくなります。

 

よって、「時間の見積もりとバッファを分けて、バッファはバッファとして別に管理すること」が求められます。具体的には、各タスクは作業見積りの6日だけ割り当て、バッファはまとめて管理します(4日×3=12日)。バッファは切り離してまとめて管理することで、「そのうちやるだろう」といった甘い見通しや、「ある限りの時間を使おう」といった時間の浪費を防ぐことができます。

 

また、プロジェクトでは、全体を細分化してマイルストーン(中間目標)を設けて、その達成に意識を集中することが基本です。これにより中だるみを防ぐことができますし、プロジェクト全体でのハードルがかなり高く感じられても、マイルストーンを設けることで、メンバーにとっては、当面のハードルが低く感じられ、段階的な挑戦意欲を引き出すこともできます。

 

さらに「プロジェクトの最初の段階から答えを出す」という姿勢も重要です。本質的な情報のみなので核心をつきやすく、創造的な答えを出しやすいからです。その後の情報収集はあくまでその答えの根拠づけや補足という位置づけが望ましいでしょう。

 

企業経営アドバイザー検定試験講座講師

三枝 元

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