ごえんをつなぐコラム

性格と仕事の成果との関係は?

DATE20.11.30

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。周りを見ていても社交的な人、真面目な人、怒りっぽい人など、人の性格は様々です。今回は性格と仕事の成果との関連性をご紹介します。

 

■性格スキルのビッグ・ファイブ

人間の能力は、大きく認知スキル(知性、知能、学力などテストで測れるもの)と性格スキル(個人的な性格的特徴でテストでは測れないもの)に分かれます。ビッグ・ファイブとは、性格スキルにかかわる5つの特性を示したものです。1980年代に心理学者たちが、様々な人間の性格に関する検査結果を統計的にまとめました。

<性格スキルのビッグ・ファイブ>

〇開放性
定義:新たな美的、文化的、知的な経験に開放的な傾向
側面:好奇心、想像力、審美眼

〇真面目さ
定義:計画性、責任感、勤勉性の傾向
側面:自己規律、粘り強さ、熟慮

〇外向性
定義:自分の関心や精力が外の人や物に向けられる傾向
側面:積極性、社交性、明るさ

〇協調性
定義:利己的ではなく協調的に行動できる傾向
側面:思いやり、やさしさ

〇精神的安定性
定義:感情的反応の予測性と整合性の傾向
側面:不安・いらいら・衝動が少ない

 

■性格と仕事のパフォーマンスとの関係

ビッグ・ファイブは仕事の成果に影響を与えます。
下記はこれまでの研究成果をもとに仕事の成果と各ビッグ・ファイブ特性との相関係数(2種類のデータの関係を示す指標)をみたものです。

<各性格と仕事の成果との相関係数>

真面目さ 0.22
外向性 0.13
精神的安定性 0.08
協調性 0.07
開放性 0.04

 

※値が1に近いほど正の相関(その性格が当てはまるほど仕事の成果が高まる)があり、値が小さいほど相関が弱く、マイナスになると負の相関(その性格が当てはまるほど仕事の成果が低くなる)があります。

各性格と仕事の成果との関連性の強さでは「真面目さ」が一番高くなっています。「真面目さ」の重要性は、仕事の種類や特徴にかかわりなく、広範な職業に影響を与えることが明らかになっています。

一方、明るさ、社交性を示す「外向性」と仕事の成果との相関係数は、プロフェッショナル(学者、医師、弁護士など)の場合、マイナス(「外交性」があるほどパフォーマンスが落ちる)ですが、管理職、営業職ではそれぞれ0.18、0.15と職種の中では最も高い数字となっています。

「真面目さ」と並んで職業人生に強い影響を与える性格スキルとしては、「精神的安定性」の側面の1つである「統制の所在(責任の所在を他人や環境ではなく自分自身に求める程度、自己責任感の度合い)」や「自尊心」が挙げられます。

 

■年を取っても鍛えられる性格は?

認知スキルは10歳までにかなり開発されますが、性格スキルは10代以降もかなり鍛えることができます。イリノイ大学のブレント・ロバーツ氏らは、これまでの研究を踏まえて、「外向性」を「社会的優越(自己主張が強い性向)」と「社会的バイタリティ(1人を好まず群れたがる性向)」に分けた上で、年齢に応じたビッグ・ファイブの変化を調べました。

これによると「社会的優越」「真面目さ」「精神的安定性」「協調性」は長い人生を通じて伸ばすことができ、特に「協調性」は40代以降もかなり伸びます。一方、「開放性」「社会的バイタリティ」は20歳前後でほぼ決まり、特に「社会的バイタリティ」はそれ以降、低下していきます。

このような調査結果は、ご自分の性格開発だけでなく、部下の育成にも役立てることができます。どのような職種でも重要な「真面目さ」「統制の所在」「自尊心」を20代のうちに固めることができれば、その後のビジネスパーソンとしての大きな成長につながります。

企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元

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