ごえんをつなぐコラム

借金がどれだけあるか、分からないときは・・・?

DATE21.01.21

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。

さて、被相続人には借金があるらしいが、どれだけ借金しているか分からない・・・。そんなとき、相続人はどうしたらよいでしょうか?

借金も「相続財産」なので、基本的には、そのまま引き継ぐことになるのですから。

 

【すぐに財産状況が分かれば、話は早い】

  もちろん、まずは借金含め、被相続人の財産を調べることですね。

調べた結果、借金は少なくて、トータルで財産がプラスの場合は「単純承認」すればよいでしょう。単純承認すれば、財産はそのまま引き継ぐことになります。

一方、借金が多くて、トータルで財産がマイナスの場合は「相続放棄」を考えてもよいでしょう。相続放棄をすれば、財産の承継をすべて拒否することができます。

しかし、相続放棄ができるのは「相続開始を知った日から3ヵ月以内」です。

何もしないままに3ヵ月経過してしまうと、単純承認したものと見なされてしまうのです。

 

【3ヵ月以内に分からなければ・・・】

 ですので、3ヵ月以内に財産状況が分からない場合は、困りますよね。

仮に、財産状況が分からないまま、借金が多いと見込んで、相続放棄をしたとしましょう。

その場合、もし、借金が少なくてトータルで財産がプラスであったとしても、財産はまったく受け取れません。

一方、借金は少ないと見込んで放棄しなければ(単純承認すれば)どうなるか。

その場合、もし、借金が多くてトータルで財産がマイナスとなれば、そのマイナス分は自腹を切ることになります。

いずれにせよ、思惑が外れれば、大いに後悔することでしょう。

 

【限定承認という方法】

そこで、すぐに財産状況が分からないときの方法として、限定承認があります。

限定承認とは、プラス財産を限度として、マイナス財産を引き継ぐ方法です。

たとえば、財産が現金1,000万円と借金3,000万円であれば、借金は1,000万円だけ引き継げばよいのです。

もし、現金1,000万円と借金500万円であれば、差し引き現金500万円は受け取れます。

つまり、借金が多くても自腹を切ることはなく、借金が少なければ、その差し引き分はしっかり受け取れるわけですね。

ですので、借金がどれだけあるか分からなくても(財産状況が分からなくても)、とりあえず限定承認をしておけば、どちらに転んでも損はしないと言えるでしょう。

ただ、このように便利な限定承認なのですが、実は、あまり利用されていません。

相続放棄の申立件数が年間20万件超に対し、限定承認は1,000件にも満たず、極端に少ないのです。

 

【なぜ、限定承認は少ないのか・・・】

それは、一言で言えば、大変だから。

相続放棄は単独でできますが、限定承認は相続人全員で行わなければいけません。

そして、限定承認では、債務の清算手続きが非常に煩雑なのです(相続放棄すれば相続人ではなくなるので、清算手続きは原則ノータッチ)。

当然、限定承認には費用と手間がかかり、また、その手続きに違反すれば、債権者等への損害賠償責任の可能性もあるのです。

ですので、できるだけ3ヵ月以内に財産状況を把握して、単純承認か相続放棄を選ぶのがベストでしょうが、、、でも、それが難しい場合の選択肢として、限定承認という方法も、知っておいて損はないですね。

 

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

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