ごえんをつなぐコラム

それって、本当に相続欠格なの?

DATE21.02.22

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。今回テーマは、「相続人の欠格事由」です。

 

【相続欠格とは?】

相続欠格とは、相続人であっても、「被相続人を殺害した」「被相続人を騙して遺言を書かせた」などといった場合には、その相続権を失わせる制度です。

たとえば、親を殺害した子供が、その親の遺産を受け継ぐなんて、明らかにオカシイですからね。

そして民法では、第891条にて、その相続欠格となる5つの行為(欠格事由)をハッキリと定めています。

 

①故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

②被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

③詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

④詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

欠格事由はわりと有名で、これらは相続検定でも、かなり細かく出題されるところです。

 

【殺害(しようと)したのか、刑に処されたのか・・・】

さて、欠格事由の中でも、とくに気を付けたいのが①です。

一般には、「被相続人を死亡させた」と聞けば、即、相続人から外される(相続欠格事由となる)と思ってしまいますが、実は、そうではありません。

①については、しっかりと一字一句、確認しましょう。

 

故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために刑に処せられた者

故意に

逆に言うと、故意でなければ、欠格事由とはならないわけです。

すなわち、「殺した」ではなく、傷害致死や過失致死など、「死亡させてしまった」場合は欠格事由とはなりません。

至らせようとしたために

殺害しようとしたことで、すなわち、殺人未遂や殺人予備(殺人の目的で凶器を購入することなど)があったということです。

たとえ、死亡していなくても、これらの行為があった場合には、欠格事由となります。

刑に処された者

これは、執行猶予の付かない実刑判決が確定することを言います。

すなわち、執行猶予付きの有罪判決を受け、執行猶予期間を満了した場合には欠格事由とはなりません。

ちなみに、被相続人を殺害したとしても、それが正当防衛や、加害者に責任能力がなくて無罪となった場合には、欠格事由とはなりません。

 

【相続欠格事由は、要確認】

相続欠格事由に該当すれば、特別な手続きは必要なく、その相続人は当然に相続権を失います。

また、相続欠格となれば、受遺者(遺言によって財産を受ける者)となることはできませんし、遺留分(一定の相続人に認められる最低限の取り分)も認められません。

ですので、欠格事由の判断はしっかり確認しておきたいものですね。

ちなみに、②については、後半部分まで、しっかり押さえておきたいものです。相続検定でも突かれやすいところです。

被相続人が殺害されたことを知った相続人が、告発または告訴しなかった場合でも、是非の弁別がないとき(善悪の区別がつかない状態)や、殺害を犯した者が自分の配偶者や親、子供などのときは欠格事由に該当しません。

また、⑤の「遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」については、この行為があったとしても、相続に関して不当な利益を目的とするものではなかったときは、相続欠格には当たらないという判例があるので要注意です。

ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏

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