ごえんをつなぐコラム

偶然の機会は計画されたものである

DATE21.03.04

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。「自分がやりたいことがわからず、与えられた仕事に集中できない」こういった悩みはありませんか?今回はこうした方へのアドバイスについて考えてみます。

 

■偶然とは計画されたものである

他の方にこれまでのキャリアをうかがうと、本当に人生は偶然の連続だと感じます。キャリア形成を考える上で重要な理論に「計画された偶発性理論」というものがあります。これは、心理学者のクランボルツによって唱えられた「キャリアは思いがけない出来事に左右される」ということを示したものです。

 

■下手に自己実現を意識すると前に進めなくなる

一方で世間では、「若いうちから自分の強みを明らかにし、将来の自分のキャリアを決めて、それに沿って計画的にステップアップしていこう」という自己実現型のキャリア・デザインが大事だとされています。

 

しかし、おそらく一般の社会人で、最初の自分の希望どおりに計画的にキャリアを積んでいる人はほとんどいないのではないでしょうか。大卒で入社した人の3割は、入社3年以内で退職し、転職するといわれます。

 

そもそも社会経験がほとんどない若者に、「どんな仕事がしたいのか」「自分の強みは何か」などわかるはずがありません(30代、40代になってもわからなかったりします)。

 

自分のやりたいことや強みがはっきりしないのに、自己実現のためのキャリア・デザインをしようとするとかなり困ったことになります。「今の仕事は本当にやりたいことなのか?」などと考え出したら、目の前の与えられている仕事に身が入らなくなり,キャリアにプラスになることが何も得られないという無駄な時間を過ごすことになってしまうからです。

 

また、変に「自分の道はこれだ!」と早い段階で決め打ちすると、視野を狭くし、本当の自分の才能を見極めることができず、成長の可能性を狭めてしまうことにもなります。

 

■偶然のチャンスをものにするには?

とりあえずやってみたら向いているかどうか分かるし,やっているうちにスキルや知識が身につき,それが強みになります。それを繰り返しているうちに,強みが増え,その結果,自分が本当にやりたいことが見えてきます。そして強みを蓄えていれば、それだけキャリアの可能性が開かれ、自分が希望する仕事を得るチャンスを捉えることができます。

 

偶然のチャンスをものにするには、ものにできるだけの力をつけておく必要があります。さらには、偶然のチャンスが訪れるのをただ受身で待つだけでなく、積極的に生み出す努力も必要でしょう。そのために必要なスキルとして、次の5つがあります。

①好奇心:新たな学習機会を積極的に求めること(後で何が役に立つか分からない)

②粘り強さ:つまずいてもすぐに諦めずに頑張り続けること

③柔軟性:状況に応じて考え方や行動の取り方を調整し変更すること

④楽観性:新たな状況でも萎縮せずに、何とかなる、うまくいくと前向きに構えること

⑤冒険心:結果が不確かでもリスクを過度に恐れず、とりあえず全力を尽くしてみること

 

5つのスキルはこれからどのような仕事に就いても必要になることです。また、今やっている仕事がどのようなものであっても得られるものでもあります。

とりあえず将来のことは棚上げして、今の仕事に専念してみることで、5つのスキルを鍛えることができ、将来自分のやりたいことが見つかった時に、それを得る確率を高めることができるでしょう。

「今の積み重ねの延長に将来がある」という認識が大事です。

 

中小企業診断士
三枝 元

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