ごえんをつなぐコラム

SWOT分析でよい戦略は生まれるのか?

DATE21.05.07

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(企業経営・生産管理担当)をしている、中小企業診断士の三枝元です。

世の中にはビジネスフレームワークと呼ばれるものが数多くありますが、その中でも最も有名でよく使われるものが、SWOT分析です。

 

SWOT分析とはなにか?

SWOT分析とは、外部環境分析(「Opportunities:ビジネス上の機会」と「Threats:ビジネス上の脅威」)と内部資源分析(「Strengths:自社にとっての強み」と「Weaknesses:自社にとっての弱み」)を抽出し(SWOT分析)、自社の方向性を決めるもの(クロスSWOT分析)です。

その結果、示唆される戦略の方向性は次の4つになります。
(1)自社の強みを生かして機会をつかむ
(2)機会を逸しないように自社の弱みを克服する
(3)自社の強みを使って脅威からの影響を最小限にとどめる
(4)脅威があり自社の弱みでもある事業は、撤退し他に委ねる

このうち、経営戦略の基本は、(1)です。たとえば、サービス業において、強みが「顧客対応力」で、機会が「少子高齢化」だとしたら、「高齢者向けのきめ細かいサービス事業を展開する」といった具合です。

比較的シンプルな構造で、導き出させる結論もわかりやすいことから、企業の状況把握や戦略の方向性の検討によく用いられます。

 

SWOT分析の問題点

ただ、実務でSWOT分析を使っていると、すぐに限界が露呈します。

(1)真の強みがない場合に対応できない
クライアント企業の社長に「自社の強みは何ですか?」と尋ねると、多くの場合、「特にない」という回答になります。また、製造業だと「技術力」、小売やサービス業、卸売業になると「顧客対応力」という回答も多いです。

しかしながら、よく話を聞いていると、本当に強みと呼べるだけの技術力や顧客対応力なのか疑問に感じることが多いです。強みと呼べるためには「他社を上回るだけの水準であること」が条件ですが、SWOT分析では対競合の観点が抜けがちで、無理やり主観的に強みを見つけ、それを前提に戦略を立てることになります。

(2)すぐわかるような機会であれば、他社も気づいている
自社がすぐわかるような「機会」であれば、当然ながら、他社も気づいているはずです。「高齢化が進んでいるから、高齢者向けになにかやろう」など誰でも考えられますし、とっくに多くの企業が進出していて手遅れということが多いでしょう。

また、斬新なイノベーション(たとえば以前のウォークマン、iPod、スマホなど)は、開発前から既に顧客がニーズを発していたから生まれたわけではありません。他社が気が付いていない「機会」を見つけるのは容易ではありません。

 

事業アイデア構想のためのツール

では、どうすれば独創的な事業アイデアを創造することができるのでしょうか?ここでは、2つのフレームワークを紹介しておきます。

<3C分析>

これは「市場(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの観点から、市場環境を分析するものです。

顧客:「顧客は誰か」「何をもって顧客を説得するか」
競合:「競争相手は誰か」「その競争相手とどのように違うのか」
自社:「自社の強みは何か」「競争優位の源泉となる中核的な技術・能力は何か」

以上の3つの観点から、市場におけるKFS(Key Factor for Success:重要な成功要因)を探るのです。

 

<CFT分析>

これは、「顧客(Customer)」「機能(Function)」「技術(Technology)」の3つの軸を使って事業領域を設定するものです。いうなれば「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを定義するためのものです。この3つを検証することで、顧客に提供する価値を考えるヒントが得られます。

3つのフレームワークの使い方としては、CFT分析で顧客価値の提供を検討したあとで、3C分析で市場におけるKFSを抽出し、SWOT分析で検証およびそれまで見逃していた戦略オプションを考えるという手順が妥当と考えられます。SWOT分析はあくまで基本戦略策定後の検証のためのツールという位置づけになります。

企業経営アドバイザー対策講座講師
三枝 元

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