ごえんをつなぐコラム

ビジネスモデルは「誰に・何を・いつ+どのように儲けるか」

DATE21.11.05

皆様、こんにちは。資格の学校TACで、企業経営アドバイザー検定試験の対策講座講師(担当:企業経営・生産管理)をしている、中小企業診断士の三枝元です。

企業は自社のすべての顧客やすべての商品からすぐに儲けようとしますが、「あえて儲けないお客や商品をつくる」「すぐに儲けない」といった「損して得取る」という発想が長期的には大きな利益につながります。

 

■ビジネスモデルのメリハリとは何か?

駅前などで配られている広告ティッシュを考えてみてください。配布している企業としては、もちろんティッシュで儲けるのではなく、同封のチラシで店に誘導して店の商品で儲けようとしているのです。これは立派なメリハリです。

また、学習塾は通常、小学生対象クラスは比較的安い料金設定にしています。これは小学生のうちに自社で囲い込んでしまい、中学生・高校生クラスに誘導してそこで儲けようというものです。これもメリハリを使った例です。

兵庫県立大学経営学部の川上昌直教授によれば、メリハリには次のようなものがあります。

<誰から儲ける?(顧客のメリハリ)>
⇒あえて儲ける相手と儲けない相手を設ける

<何で儲ける?(商品のメリハリ)>
⇒あえて儲ける商品と儲けない商品を設ける

<いつ儲ける?(時間のメリハリ)>
⇒時間をかけて儲ける

 

■「誰から儲ける?」顧客のメリハリ

まずあえて「儲ける顧客」と「儲けない顧客」を設定するパターンを見てみましょう。

・遊園地など家族連れレジャーでは、子供料金は安く大人料金は高く設定しています。これは子供では儲けず大人で儲けるパターンです。

・スマホのゲームやオンラインストレージサービスでは、エントリーモデルは無料で提供し(初心者からは儲けない)、それでは飽き足らなくなったユーザーに対し課金しています(ヘビーユーザーから儲ける)。

・テレビやラジオ、雑誌、動画サイトなどでは、視聴者(コンテンツ)からは儲けず、広告主(広告出稿料)から儲けます。広告モデルと呼ばれます。

年齢層・嗜好・ニーズ・技量などが異なる複数の顧客層が存在するなら、顧客のメリハリが可能です。

 

■「何で儲ける?」商品のメリハリ

次にあえて「儲ける商品」と「儲けない商品」を設定するパターンを見てみましょう。

・ゲームビジネスでは、ハードウェアは安価に抑えられていますが、ゲームソフトは高マージンです。まずハードウェアを買わせて、その後のソフトで儲ける仕組みです。プリンターとトナー、携帯電話本体と通話料も同様です。

・牛丼屋では牛丼は低マージンでサイドメニューの卵や味噌汁などは高マージンです。サイドメニューで儲けるというやり方は、ガソリンスタンド(ガソリンは低マージンで洗車や消耗品は高マージン)、カラオケルーム(カラオケ利用料は低マージンでドリンクや食べ物は高マージン)などにも見られます。

商品・サービスのカテゴリーが複数ありセットで使われることが多い(ハードとソフト、消耗品など)ようであれば、商品のメリハリが可能です。

 

「いつ儲ける?」時間軸のメリハリ

「一度にたくさん儲ける」のではなく、「分散して長く儲ける」「当面は損をして末永く儲ける」という考え方です。

・顧客との関係性を築いて長期的に儲ける(小売・サービス全般)

・顧客を囲い込み長期的に儲ける(ソフトウェア、タバコなどの嗜好品)

・本体ではなく後で追加アプリで儲ける(LINEなど)

・顧客の成長に合わせてランクアップさせる(中学受験指導から高校・大学受験指導への誘導、スポーツ用品等の初心者用から上級者用へのランクアップ)

特定の顧客との関係が短期間ではなく長期にわたる可能性があるなら、時間軸のメリハリが可能です。

ビジネスモデルのメリハリは規模や業種を問わず可能です。是非、検討してみてください。

 

企業経営アドバイザー検定試験講座講師
三枝 元

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