ごえんをつなぐコラム

【年金】老齢年金の扶養手当、加給年金について

DATE22.04.19

年金には扶養手当があります。これを加給年金額といいます。
今回は、老齢年金につく加給年金額の要件や、令和4年4月からスタートした改正点の内容について紹介していきたいと思います。


・加給年金額がつく要件

加給年金額がつくためには、原則、老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険に20年以上(240月以上)加入していることが必要となります。

※厚生年金の加入期間が20年に満たない人でも要件を満たす特例もありますが、ここでは説明を省略します。

この条件を満たしている方に生計維持されている①65歳未満の配偶者または②18歳到達年度末日までの子(または20歳未満で障害等級1、2級に該当する子)がいる場合、加給年金額が加算されます。

生計維持関係があるかどうかは、年収などの要件で認定されることになっています。

原則として、年収850万円未満(所得655.5万円未満)であれば、生計維持関係にあると認められることになっています。


・配偶者加給年金額が支給停止になるとき

配偶者加給年金額は、一定の要件のもと、支給停止となることがあります。

①加給年金額の加算対象となる配偶者自身が老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上)や退職共済年金(組合員期間20年以上)を受ける権利があるとき、

②障害基礎年金や障害厚生年金を受けられるときについては、配偶者加給年金額が支給停止となります。
さて、加給年金額がつくのはどんなケースなのか、具体例でみてみましょう。

【例題】
昭和31年4月5日生まれのAさん(男性)、厚生年金の加入期間は500月あります。Aさんは、令和4年4月に65歳になり、老齢基礎年金と老齢厚生年金を受けとることになりました。
Aさんには、昭和40年7月28日生まれの妻Bさんがいます(現在58歳)。Bさんは厚生年金保険に加入中で、現在までの加入期間は300月、年収は500万円です。Aさんの老齢厚生年金には、加給年金額が加算されるでしょうか。

【答え】
妻Bさんが64歳になるまで加給年金額が加算されます。

まず、Aさんは厚生年金の加入期間が500月あり、20年以上の加入期間がありますので、加給年金額がつく年金加入歴の要件はOKです。そして、Bさんは65歳未満で年収は500万円ですから生計維持関係にもあります。よって、Bさんは加給年金額の加算対象となる配偶者に該当します。

次に、Bさんの生年月日は昭和40年7月28日生まれですから、64歳から報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金の受給権が発生します。

Bさんの厚生年金の加入期間は現時点で300月、20年以上の厚生年金の加入期間がありますので、Bさんが特別支給の老齢厚生年金の受給権発生をもって、Aさんの加給年金額は支給停止となります。

では、Bさんが特別支給の老齢厚生年金の受給権発生時点で在職中であり、在職老齢年金の仕組みにより、その全額が支給停止となった場合はどうなるでしょうか。
従来は、加給年金額の加算対象となる配偶者に、厚生年金の加入期間が20年以上ある老齢年金の受給権が発生しても、在職老齢年金の仕組みにより、その全額が支給停止されている場合は、加給年金額は引き続き加算されていました。

それが、今回の法改正により、令和4年4月以降は、在職老齢年金の仕組みによる支給停止によって実際に年金を受け取っていなくても、年金を受け取る権利がある場合は加給年金額の支給停止対象となりました。
今回の例でいうと、Bさんが在職中で、64歳から受給する報酬比例部分が在職老齢年金の仕組みにより全額支給停止となっている場合でも、Aさんの加給年金額は、Bさんの64歳到達をもって支給停止になります。
なお、この改正点については経過措置が設けられており、①令和4年3月時点で、本人の老齢厚生年金または障害厚生年金に加給年金額が加算されている場合、②令和4年3月時点で、加給年金額の加算対象者である配偶者が、厚生年金の被保険者期間が20年(240月)以上ある老齢厚生年金等の受給権があり、その全額が支給停止されている場合については、今回の改正の対象外となり、引き続き加給年金額が加算されます。

加給年金額はやや複雑なので、もらえる権利があるのに、もらえないものと思っていらっしゃる方も多いところです。
年金をもらえる年齢に到達したら、速やかに手続きを行うことで、もらい忘れ、手続き忘れを防ぐことができます。日本年金機構から届くお知らせについては、必ず確認するようにしましょう。

 

社会保険労務士
後藤 朱

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