【相続】負担した葬式費用は、相続税の対象とはならない
DATE25.12.25
こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの藤原です。
今回のテーマは、「債務控除(葬式費用)」です。
借金、未払金、葬式費用は差し引ける
葬式費用は、葬儀の形式・規模・地域等によって大きく変動しますが、全国的な目安としては、120万円~200万円程度とされています。
昨今の物価高の中、今後は上昇することも予想され、遺された遺族にとっては大きな負担ですね。
ただ、負担した葬式費用については、相続税の対象とはなりません。
たとえば、相続が発生して、亡くなった人から、以下のものを引き継いだ(負担した)Aさんがいたとしましょう。
・現預金 3,000万円
・借金 500万円
・未払金 300万円
・葬式費用 200万円
この場合、相続税の計算において、取得した現預金3,000万円から、借金500万円と未払金300万円を差し引くことができます。
このように、取得したプラスの財産から、引き継いだ借金や未払金(※)といったマイナスの財産(債務)を差し引くことを債務控除と言います。
※但し、墓地・墓石・仏壇等の未払金は対象外
そして葬式費用についてですが、これは借金や未払金のような「債務」ではないものの、相続開始に伴って必然的に発生する費用ということで、債務控除の対象となるのです。
ですので、葬式費用200万円も、現預金3,000万円から差し引くことができるので、Aさんの相続税の課税価格は2,000万円となります(3,000万円-500万円-300万円-200万円)。
前述の「負担した葬式費用については、相続税の対象とはなりません」とは、こういうことなのです。
このように、債務控除によって、相続税の課税価格が低くなることで、相続税が安くなる(ケースによってはかからなくなる)可能性があるのです。
差し引けそうだけど、差し引けないものは?
なお、本葬式費用以外にも、通夜や納骨のための費用も差し引けますし、寺などへのお布施や読経料、戒名料なども差し引けます。
基本的に、葬式に関連する支払いであれば、債務控除の対象となると思ってよいでしょう。
ですので、(一見、差し引けそうだけど)差し引けないものを意識したほうが楽ですね。
そして、それは主に、「香典返戻費用」と「法会に要した費用(初七日費用や四十九日費用など)」が挙げられます。
相続放棄していても、葬式費用は差し引ける
ところで、債務控除が使えるのは、原則として、相続人に限られます(※)。
しかし、葬式費用については、相続放棄をした人(=相続人ではない)が支払った場合でも、取得遺産額から、その支払額を差し引くことができるのです(債務控除の対象となる)。
※厳密には他にも要件はあるが、ここでは割愛
・・・でも、相続放棄をした人は、そもそも、遺産を取得しない(相続税の負担はない)のだから、関係ないのでは、と思うかもしれませんね。
いえ、相続放棄をした人でも、相続税を負担するケースはあります。
たとえば、相続放棄した人が、死亡保険金の受取人となっていれば、(相続放棄をしていても)死亡保険金は受け取ることができ、その受け取った死亡保険金は、相続税の課税対象(※)となります。
※契約者・被保険者=被相続人の場合
また、相続放棄をした人でも、遺言によって遺産を取得することもあり(※)、その遺贈により取得した財産は、相続税の課税対象となります。
※借金逃れのためなどの場合は認められないこともある
上記のようなケースで相続税を負担するとなれば、(その税額算出の基となる)取得遺産額から、支払った葬式費用が差し引かれるのは、かなり助かることでしょう。
ファイナンシャル・プランナー
藤原 久敏