【年金】年金の話が難しく感じる本当の理由
DATE26.01.13
はじめまして。ファイナンシャルプランナーの横川由理と申します。今回より、年金コラムを担当します。どうぞよろしくお願いいたします。
年金のお話は、「制度が複雑」「改正が多くて分かりづらい」と感じる人は少なくありません。けれど、年金が難しく感じられる本当の理由は、制度そのものよりも、年金がつくられた当時の前提と、今の現実が大きくずれていることにあります。
年金制度は、もともと「長生きした人のため」のしくみだった
厚生年金保険ができたのは1942年。当時の日本人の平均寿命は50歳前後でした。そして、当時の厚生年金保険の支給開始年齢は55歳です。年金は、平均寿命を超えて長生きした人だけが対象となる制度だったことがわかります。
1942年当時は太平洋戦争のさなかにあり、食料不足や衛生環境の悪化が深刻でした。十分な医療も行き届かず、乳幼児の死亡率も高かったことから、寿命は現在と比べものにならないほど短い時代でした。
しかし戦後になると、水道の整備や予防接種の普及、医療技術の進歩によって、人々の健康状態は大きく改善します。その結果、平均寿命は急速に延び、わずか10年ほどで男女ともに60歳を超えています。
厚生年金保険ができてから約20年後、1961年に国民年金が始まります。当時の平均寿命は、男性がおおむね65歳、女性は70歳前後。支給開始年齢は65歳でした。ここでも前提は同じ。老齢年金は、「長生きした人への生活保障」であり、定年退職後、何十年間にもわたってもらい続ける制度ではなかったのです。
制度が想定していなかった時代に突入
では現在はどうでしょうか。
2025年に公表された平均寿命は、
- 男性:81.09歳
- 女性:87.13歳
年金制度がつくられた当時と比べると、想定していた寿命を20年以上も上回る時代になっています。しかも、少子化が進み、年金を支える現役世代は減り、受け取る高齢者は増え続けています。
「年金が足りなくなるのはおかしい」そう感じる人もいますが、制度が想定していなかった状況が続いているのですから、足りなくならないほうが不自然ともいえるかもしれません。
年金を難しく感じるのは、制度が変わり続けているから
年金は、寿命の延び、働き方の変化、人口構造の変化に合わせて、帳尻を合わせ続けている制度です。たとえば、
・支給開始年齢の引き上げ
・在職老齢年金の見直し
・繰上げ・繰下げ受給
・加入対象者の変更等
これらはすべて、「長生きが当たり前になった社会」において、年金制度を成り立たせるための調整だといえるでしょう。ところが、年金を「昔からある完成された制度」と考えていると、こうした改正が場当たり的に見え、ますます分かりにくく感じてしまうのではないでしょうか。
だからこそ、しくみを知ることが何よりも大切なのです。年金は、金額だけを追いかけると混乱してしまいます。大事なのは、
- どんな前提で制度がつくられ
- 何が変わり
- これからどこへ向かおうとしているのか
このような背景を理解することで、ニュースで見る改正点も、「なぜそうなったのか」が見えてくることでしょう。
年金の制度自体が難しいのではありません。前提が大きく変わった制度を前提を知らずに見ていることが、難しさの正体だと私は考えています。
しくみを知ると、見え方が変わる
少子高齢化が進む中で、年金制度はこれからも変わり続けていきます。だからこそ、断片的な知識ではなく、制度全体のしくみを理解することが欠かせません。年金のしくみを学ぶことは、自分で考えて判断できる力を持つために役立ちます。
「そりゃ足りなくなるよね」そう納得できたとき、年金はぐっと身近で、理解できる制度になることでしょう。
世の中にはたくさんの情報があふれていますが、年金のしくみと計算方法を学ぶことが、効率的な仕事につながったり、老後の不安を払拭するためのひとつの手段となるはずです。
ファイナンシャルプランナー
横川 由理