【年金】在職老齢年金の見直しで何が変わる? ~働くシニアを後押しする制度改正~
DATE26.06.18
こんにちは。ファイナンシャルプランナーの横川由理です。
最近は、定年後も元気に働き続ける方が増えています。一方で、「働くと年金が減ると聞いたので心配です」という声も少なくありません。
そこで今回は、在職老齢年金制度について取り上げます。制度の変更によって何が変わったのか、一緒に見ていきましょう。
在職老齢年金とは、65歳以上で老齢厚生年金を受け取りながら、厚生年金に加入して働く人が対象です。具体的には、給与や賞与と年金の合計額が一定額を超えた場合に、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止となる制度です。
2026年4月から、在職老齢年金の支給停止基準額が51万円から65万円へ引き上げられました。
この「51万円」や「65万円」は、65歳以上で厚生年金加入者や70歳以上の厚生年金事業所勤務者の給与と年金の合計額が、いくらまでなら年金が減額されないかを示す基準額(支給停止調整額)です。
今回の制度改正は、少子高齢化による人手不足が続く中、働く意欲や能力のある高齢者が活躍しやすい環境を整えることを目的として行われました。改正前は、給与や賞与をもとに計算した「総報酬月額相当額」と、老齢厚生年金の月額である「基本月額」の合計が51万円を超えると、年金の一部が支給停止となっていました。
【改正前の計算式】
・基本月額+総報酬月額相当額が51万円以下の場合 → 年金は全額支給
・基本月額+総報酬月額相当額が51万円を超える場合
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)÷2 ※
2026年4月以降は支給停止調整額が65万円に引き上げられました。
【改正後の計算式】
・基本月額+総報酬月額相当額が65万円以下の場合 → 年金は全額支給
・基本月額+総報酬月額相当額が65万円を超える場合
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2 ※
※基準額を超えた部分の半分が支給停止となります
では、実際にどの程度影響があるのでしょうか。
老齢厚生年金の基本月額が15万円、総報酬月額相当額が45万円の方を例に考えてみます。基本月額と総報酬月額相当額の合計は60万円です。
改正前の基準額51万円で年金額を計算すると、
支給停止額:(15万円+45万円-51万円)÷2=4万5,000円
年金額:15万円-4万5,000円=10万5,000円
毎月4万5,000円の年金が支給停止となっていました。
一方、改正後の基準額65万円で計算すると、合計額60万円は65万円以下となるため、老齢厚生年金15万円は全額受け取ることができます。
月額4万5,000円、年間では54万円にもなります。もちろん、すべての人がこれほど大きな影響を受けるわけではありません。
しかし、これまで支給停止の対象となっていた人の中には、この例のように支給停止そのものがなくなったり、支給停止額が少なくなったりすることが多いのではないでしょうか。
働くと年金が減る方もいらっしゃいますが、一方で、65歳以降も厚生年金保険に加入して働くわけですから、年金額も増えるわけです。働くことは現在の収入を得るだけでなく、将来の年金額を増やすことにもつながるといえるでしょう。
なお、在職老齢年金の対象となるのは老齢厚生年金の報酬比例部分であり、老齢基礎年金は支給停止の対象ではありません。また、実際の支給停止額は給与や賞与、年金額によって異なります。
※経過的加算年金など細かい規定も別途あります
人生100年時代といわれる現在、年金制度も「長く働くこと」を前提とした仕組みに変わりつつあります。今回の在職老齢年金の見直しは、働くシニアにとって追い風となる制度改正といえるでしょう。自分、あるいはご家族がどの程度影響を受けるのか、一度確認してみてはいかがでしょうか。
ファイナンシャルプランナー
横川 由理